外食の潮流を読む(108)ECから始まりリアル店舗を営業 東京ドーム出店果たした商品

2024.06.03 544号 11面

 3月16日、東京ドームシティにミートパイ専門店「BYRONBAY MEATPIE(バイロンベイ ミートパイ)」がオープンした。フードトレーラー(4坪)の形態で、8種類のミートパイ(1個500円)とサイドメニュー、ドリンクをラインアップし、テイクアウトとデリバリーで提供。東京ドーム内での軽食需要をはじめ、近隣オフィスや住宅にデリバリーで届けるなど、「ミートパイ」を楽しむライフスタイルを広げている。

 同店を経営するのは(株)ミッション(本社/千葉県佐倉市、代表/南澤一輝)。同社は17歳からサーファーとして活躍している南澤輝雄さん(65歳/現・ミッション相談役)が、千葉県佐倉市内でサーフショップと同時に飲食店を営んできた。

 同社がミートパイに取り組んだのは2018年5月から。そのきっかけはあるセミナーで現相談役が飲食のEコマースを学んだこと。そこで、サーフィンで親しんでいたオーストラリアのソウルフードである「ミートパイ」が有望ではとひらめいた。店名の「バイロンベイ」はオーストラリアにあるサーファーの聖地だ。

 さっそく佐倉市内にミートパイのセントラルキッチンをつくり、オンラインでミートパイを販売するようになった。これによって全国に「バイロンベイ ミートパイ」のファンが育っていった。

 相談役の子息である現・南澤社長(34歳)が17年にミッションに入社。社長は「新しいことを始めよう」と、コロナの間に事業再構築補助金によって、ミートパイのキッチンをつなげてミートパイのリアル店舗をつくることにした。そして同社のサーフショップと併設して、ファストカジュアルショップの営業をスタート。「サーファーの聖地:バイロンベイ」と「オーストラリアのソウルフード:ミートパイ」という、絶妙なカップリングとなった。リアル店舗がオープンしたことで、オンラインでの注文が増えるようになった。

 東京ドームシティ出店のきっかけは、同社の和食店を船橋駅の商業施設にリーシングする案件があったこと。しかしながら、この物件は規模が大きく、ランチ主体の営業となるために出店を見送ることにした。

 社長は、そのリーシング業者をミートパイのリアル店舗に招いて「ミートパイ」を体験してもらった。この業者は東京ドームのリニューアル案件にも関係していて、この商品の存在を東京ドームシティの担当者につないでくれた。

 ミッション側では「これは大きなチャンス」と前向きに取り組み、担当者との面談からプレゼンへととんとん拍子に進み、今回の出店に至った。同社のミートパイは、この6年間で「オンライン販売」→「佐倉市内にリアル店舗オープン」→「東京ドームシティに出店」という具合に、大きくステップアップした。

 ここでの営業が瞬く間に知られ、新たなリーシングの話も複数出てきた。これからは商品を同業他社に供給するなど、ビジネスが脈々と広がりそうである。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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