メニュートレンド:雑炊にあんかけで味変の新発想! 品質追求で脇役を主役に
雑炊といえば「鍋料理を食べた後の締め」というオマケ的なイメージが強い。この単品で成立しがたい料理を「新しい締め文化」という価値観で再定義し、罪悪感なくお腹を満たしたい女性を中心に支持を得ているのが、東京・池袋の「とろとろあんかけ雑炊専門店 とろぞう 池袋本店」だ。
●おいしくて罪悪感もなし!
最初にベーシックな雑炊を味わった後に、あんを加えて「味変」を楽しむのが同品のスタイル。土鍋にたっぷり張られた黄金色のだしは名古屋コーチンと香味野菜、カツオから丁寧にとった上品な味と香り。白飯は流水でコメ粒表面のぬめりを除いてからだしと合わせるひと手間を施す。サラサラとして一粒一粒の絶妙な弾力が心地よい食べ応えだ。
後半「あんかけ」を加えると、一転してパンチのあるクセになる味に変身。ラインアップは、ニンニク醤油の香ばしさが食欲を刺激する「特製とろとろあんかけ」の他に、リゾット風に変身する「和風クリームあんかけ」、花椒の香りが広がる四川風の「激辛あんかけ」など5種類。繊細でベーシックな雑炊と個性むき出しなあんかけとのギャップの大きさが人気の理由だ。
「コンセプトは“新しい締め料理文化の創造”。味変を楽しめる雑炊とすることで、鍋料理の最後だけでなく、飲んだ後にさっぱりしたものを食べたいというニーズに喜ばれると考えました」と店長の池田篤史さんは語る。
雑炊専門店という、これまでになかった業態だけに、オープン当初は集客に苦しんだそう。やがて深夜のラーメンに罪悪感を感じる20代女性を中心に支持が高まり、昨今はメインの食事として来店する客も増えてきている。
開発でもっとも難航したのが、味の柱となる「だし」。実に1年半もかかったという。「試行錯誤の末にたどり着いたのが鶏とカツオのダブルスープ。各地の地鶏を取り寄せて試作を繰り返し、理想の味を追求しました」と池田店長。最終的に採用したのは名古屋コーチン。個体の状態に合わせ、池田店長自ら骨の砕き方にまでこだわってだしをとる。
3月には2店目を浅草にオープンし、多店舗化にも意欲的に取り組む考えだ。
●店舗情報
「とろとろあんかけ雑炊専門店 とろぞう 池袋本店」
所在地=東京都豊島区西池袋1-40-5 名取ビル2階/開業=2022年11月/坪数・席数=15坪・25席/営業時間=17時~翌5時。不定休/平均客単価=3000円
●愛用食材・資材
「恵穂」 ジェイラップ(福島県須賀川市)
生産者の熱意も「おいしい」の要素
池田店長は「生産者の思いを消費者に伝えるのも料理人の役目」という信条の持ち主。食材選びでは品質だけでなく生産者に会ってから決めるという。雑炊の主力であるコメには「でんでん倶楽部稲作研究会」のものを採用。品質に対する生産者の情熱と先進的な取り組みに惚れ込んで決めたという。品種はコシヒカリ。
規格=5kg