外食の潮流を読む(113)宇都宮駅の駅ビル1階にある餃子の店「バリロン」は可能性を開く

2024.11.04 549号 11面

 筆者は今年の夏休み、東北旅行を南下してきて、「宇都宮餃子を食べよう」と、JR宇都宮駅に降りた。駅と直結している商業施設「宇都宮パセオ」の1階を歩いていると、大層繁盛している店に遭遇した。

 夕方の16時ごろ、店内に入るとテーブル席まで15人ほどのウエーティング。この通路に面して餃子を手包みする工房がガラス張りで設けられ、この中でスタッフが忙しく作業していた。

 筆者がスマホでこの様子を背景にして自撮りをしようとしたら、スタッフが作業の手を止めて筆者の自撮りの画面の中に手を振りながら入ってきた。「ここはテーマパークか?」と大いに感動した。

 ここの店名は「餃子といえば芭莉龍」と書かれている。「店名の漢字は、なんと読むのだろう?」と思い、女性スタッフに尋ねたところ「バリロンと言います!」と満面の笑顔で答えてくれた。

 看板商品の「焼餃子」を注文したところ、大ぶりの餃子が5個(638円)。食べるともちもちとした皮の中にあんにしっかりとした歯応えがあった。とても記憶に残るメニューであった。

 同店を経営するのは(株)チームバリスタ(本社/栃木県宇都宮市、代表/磯信太郎)。この社名は、コーヒーのサーバーのことではなく「元気バリバリ・スタッフ」という言葉に由来する。代表の磯氏が2010年に33歳で起業したときに考え、創業の店名に「ばりきょう」とつけた。それ以降、バリバリの「バリ」に動物の名前をつけてブランディングをしていこうと考えて「ピッツァ&ラムの店 Bariton」「炉ばた 鹿芭莉」「bariSAIcafe」という具合に、1年に1店舗のペースで展開してきた。現在は16店舗(宇都宮市内14店舗、鹿沼市内1店舗、東京駅1店舗)を擁している。

 同社の理念は「喜ばれる事に、喜びを。」である。店舗展開は、この理念の下に「宇都宮の人々に喜んでいただくこと」を考えながら店を出してきた。同社の2店舗目となる「ピッツァ&ラムの店 Bariton」では、ピザの価格が1品1500円前後の当時にワンコインで提供し、宇都宮でラムチョップが知られていなかった中で月間3000本を売るようになった。

 「餃子といえば芭莉龍」をオープンしたきっかけは、19年10月に「生きてる餃子 バリス」を出店したこと。同社では餃子業態にチャレンジして、皮からあんまで店内スクラッチで行う仕組みをつくり、今のレシピのベースとなった。ここの繁盛ぶりを宇都宮パセオのリーシング担当者が知ることになり、現在に至る。

 社員70人強を含めた300人以上の従業員の全員と、会社側は売上げをはじめとした数字を共有して、年に2回、全員で360度評価を行って、その評価点を昇給の材料としているという。

 同店がオープンしたのはコロナ禍真っ最中の20年10月。52坪70席の同店は客単価2400円で1日に6~7回転して、月商3500万円。「喜ばれる事に、喜びを。」という理念が、飲食業の可能性を切り開いている。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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