デリカの「今」がわかる中食通信:売れてるご当地デリカ惣菜弁当100選(6)グランマート
◆一人一人に適した量目が選べる楽しさ提案「あんべぇいぃ」
秋田県内に15店舗を展開する「グランマート」は、高齢化率・約4割の地域環境に根差したリージョナル食品スーパー。高齢者の日常にやさしく、現役世代に使い勝手よく、伝統の味覚を尊重するなど、地元の食生活・食文化を守り続けている。その象徴がデリカの「あんべぇいぃ」シリーズと「含め煮」だ。いずれも少子高齢化や少人数世帯を踏まえた質実的な逸品。昨今は同じ課題を抱えている同業者の視察も増えている。全国から注目されるデリカの双璧をご紹介。
●「あんべぇいぃ」シリーズ
食べ切りサイズでお客さまの暮らしに寄り添う 惣菜売上げ3割強アップ、構成比3~4%増
POINT=面倒な手間と選べる楽しみが決め手
「あんべぇいぃ」とは「ちょうどいい」を意味する秋田県の方言。2020年、惣菜のミニパック「あんべぇいぃ」シリーズを打ち出したところ、惣菜部門の店舗平均日販は約60万円から約80万円に、惣菜売上比率は10~13%から16~17%に跳ね上がった。高齢者の少食需要、共働き世帯の使い勝手など、昨今のローカルニーズに見事的中した格好だ。
あんべぇいぃシリーズは「好きな量目と好きな選択」が基調。品数は店舗裁量により30~50品(惣菜商品約300品中)。以前の分量は「大・中・小」の3種だったが「大・中・小・あんべぇいぃ」の4種になり、「1:6:3」だった販売比率は「1:2:2:5」に一変。あんべぇいぃの大健闘が光る。惣菜の成功を受け、生鮮3品でも同様の商品化を推進。全社を挙げた「あんべぇいぃ」のブランド化に弾みを付けている。
佐々木一輝・デリカSVは「横手店の改装時、パートさんの発案で始めましたが、正直、面倒なので消極的でした」と明かし、「しかし目の前でどんどん手に取ってもらえる。これ目当ての来店も増えて活気づく。面倒な手間ほど求められる、選べる楽しさがリピートを呼ぶ、と確信し全店に導入しました」と説く。
ラインアップは煮物とサラダを主力に唐揚げやギョウザなど定番惣菜の中から現場裁量で決定。かたやハーフサイズの丼や弁当が伸びているのも興味深い。
「客層の食卓に合わせて手数を増やす大切さを再認識。地元の環境に育まれた、地元ならではの惣菜を目指す」(佐々木氏)と意欲的だ。
●盛りかえれば絶対バレない「含め煮」
「煮物はみんなで」の大皿ニーズに合致 「甘じょっぱい」ではなく「しょっぱ甘い」
POINT=“黒っぽい”秋田県南部の味覚を再現
煮物は地元の味覚を象徴する家庭料理。同店の「含め煮」は、その家庭料理の味覚を忠実に再現したローカル惣菜だ。「器に盛りかえれば絶対に惣菜だとバレない」という家庭風の手作り感が自慢。「甘じょっぱい」ではなく「しょっぱ甘い」と表現される調味が地元客の琴線に響くという。
誕生は2013年。地元に根付く含め煮をイメージして開発した。惣菜メーカーから仕入れた煮物商品も販売しているが、こちらは万人受けする薄味。それに重ならないよう、地元・秋田県南部の濃い口を志向した。
当初は個食用に小容器入りで販売したが、手応えはイマイチ。試しに大容器入りを追加したところ、「煮物は皆で食べる」という地元の大皿ニーズに合致。高齢者を中心に家族客の支持を獲得した。日販は各品とも安定して10~20品(店により異なる)。出せば売れる手応えだが、手作りの製造能力が限界のため、これ以上の提供は難しいという。
調理方法は、すべての素材を鍋に合わせて炊き上げる「ごった煮」。醤油とみりんをベースに前日に炊き上げ、冷蔵庫で一晩寝かせて味を含ませ、当日朝、再度炊きあげて出荷する。
調味ポイントは、地元の醸造メーカーが製造する「万能つゆ」。この「ごった煮」と「万能つゆ」の組み合わせが「地元の家庭の味」を演出する決め手であり、「器に盛りかえても絶対に惣菜だとバレない」という裏付けでもある。
昔はどこの家庭でも作っていた煮物だが、いまや材料を揃えるだけでも一苦労。地元の味覚かつ家族の大皿を398円で再現できるなら安いものだ。
●店舗情報
「グランマート」(15店舗/秋田県)惣菜売上比率16~17%
(株)タカヤナギ/所在地=本社・秋田県大仙市佐野町16-17/創業=1910年(菓子卸業)/設立=1948年(小売業)/年商=276億円(2024年3月期)/従業員数=1,650人(同)/店舗数=秋田県内に総合食品スーパー15店舗を展開