アポなし!新業態チェック(199)「THE GRILL TORANOMON」虎ノ門ヒルズ

2024.03.04 541号 11面

 ●HUGE、虎ノ門ヒルズに新ブランド 洋食の「オールデイダイニング」、あらゆる時間帯とシーンに対応

 独自のスタンスで複数のブランドを展開するHUGE(ヒュージ)が、東京・港区の複合施設「虎ノ門ヒルズ」に新業態「THE GRILL TORANOMON(ザ グリル トラノモン)」をオープンした。同社ではこのブランドのコンセプトを「オールデイダイニング」と定め、どの時間帯でも満足できる飲食体験が楽しめるレストランとして位置付けている。

 同店のメニューは、同社が考える新しい感覚の“洋食”であり、店名が示す通りメインはグリル料理。スモークとグリルを同時に行うことができるというスペイン製の炭火オーブンを使用したグリル料理には、「タスマニア サーモンのムニエル」(2800円)や「アンガス牛サーロイン」(200g、4300円)、「白金豚肩ロースのグリル」(200g、2600円)など、本格的なメインディッシュが揃う。もっと気軽な一品料理としては、「欧風ビーフ・カレー」(1800円)や「ビーフ・ストロガノフ」(2100円)、パスタの「小海老とフルーツトマトのポモドーロ」(1600円)など。カレーやパスタなどの料理はランチタイムにも異なったスタイルと価格で提供する。また、店内の中央に据えたRaw Barには新鮮な魚介類が並び、食事にも酒のつまみにもなる20品を超える前菜メニューが豊富なアルコール類と共に用意されている。

 建物の外部に面したテラス席もあり、テラス席も含めた席数は約180席。さまざまな楽しみ方が可能な魅力あふれる新ブランドだ。

 (価格は税抜き)

 ★けんじの評価 ステーキからカレー、グラタンまで提供

 ヒュージは、日本の外食業界の中ではやや特異な存在といえるかもしれない。創業者の新川義弘氏が取締役であったグローバルダイニングを退社し、同社を設立したのは2005年。翌06年に、東京・吉祥寺の「リゴレット」と銀座の「ダズル」という看板ブランド2店舗を出店し、以後、平均して1年に2店舗ほどのペースで出店を続けてきた。現在は、ベーカリー店やワインショップなども含めて40店舗近くを展開している。

 同社の飲食店のほとんどは大型のディナーレストランであり、メキシコ料理のように独自の市場を開拓した分野もある。闇雲に規模の拡大を図らず、「街の資産になる」をスローガンに、出店した店が長期にわたって安定した経営を続けるための組織づくりを目指すことで、多くの経営的な試練も乗り越えてきた。米国流の合理的なレストラン経営と日本的な労働集約型の組織を巧みに合体させた不思議な企業だ。

 同社に弱点があるとすれば、経営の後継者づくりと国内市場への依存度の高さかもしれない。同社がターゲットとするような国内の外食市場には限界があり、海外出店を加速させなければ既存店の足元が少しずつぜい弱になっていく可能性もある。そのためには、やはり圧倒的な知名度のある旗艦ブランドの確立が必要だろう。同社の手厚く緻密なオペレーションは、むしろ海外でこそ高く評価されるのではないか。外食産業というよりもレストラン業として、平均賃金の引き上げをけん引するような企業となることを期待したい。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「THE GRILL TORANOMON」虎ノ門ヒルズ

 開業=2024年1月16日/所在地=東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズステーションタワー2階

 ●編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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