海外通信 外食ビジネスの新発想(74)NY流ベーグルの食べ方
「アインシュタイン・ベーグル」の「テキサス・ブリスケット」(7$79¢)。チェダー・ハラペーニョ・ベーグルに、ビーフのブリスケット、チェダーチーズ、卵、チポートレ・アイオリ・ソースを挟んだサンドイッチ。同店のベーグルは、日本のコストコでも買える
ベーグルにクリームチーズは相性がいい。クリームチーズは、刻みネギを混ぜたり、ブリーベリーなどのフルーツを混ぜたりしてバリエーションを作ることも多い。ちなみに写真は、モントリオール風のベーグル。モントリオールのベーグルは、NYのベーグルと並んで有名だ。NYに比べて細くて小さい。ハチミツを加えた湯でゆで、まきのオープンで焼くのがモントリオール風の作り方だ (C)Alison Slattery
●外はこんがり 中はもっちり 「ゆでてから焼く」が伝統の製法
日本でも食べられるようになったベーグル。東欧ユダヤ人のパンで、ひも状にのばし、ドーナツ状にかたどって発酵させ、ゆでてから焼くという独自の方法で作る。ゆでることでもちっとした食感があるが、手間もスペースも要るので、日本では蒸気を吹きかけながら焼くことが多いようだ。
アメリカへは19世紀にポーランド系のユダヤ人が持ち込んだ。ユダヤ系の多い都市で特に人気があり、NYでは1900年にはすでに70店舗のベーグル店があったという。現在は軽く200店を超える。クラストにポピーシード(ケシの実)やごま、刻んだ玉ネギなどをまぶしたもの、ライ麦や全粒粉などの生地を使ったもの、生地にレーズンとシナモンやブルーベリーなどを混ぜ込んだものなどいろいろな種類が売られている。
老舗には、創業90年の「ゼイバーズ(Zabar’s)」や創業110年の「ラス・アンド・ドーターズ(Russ and Daughters)」、創業88年の「コッサーズ(Kossar’s)」などがある。人気店の一つ、「ザッカーズ・ベーグル・アンド・スモークトフィッシュ(Zucker’s Bagels and Smoked Fish)」は、2006年に創業した比較的新しいベーグル店だ。無漂白の小麦粉とモルトシロップを使用し、手でかたどり、釜ゆでしてから焼くという昔ながらの製法でベーグルを作っている。外はこんがり、中はもっちりというのが同店の自慢だ。マンハッタンの7ヵ所に店を開いている。
「ブラック・シード・ベーグルズ(Black Seed Bagels)」は14年にできた新興の職人ベーグル店。市内各地に10店舗展開しており、自然発酵させた生地をモントリオール風にハチミツを加えた湯でゆでて甘味を加えた後、まきのオープンで焼いている。やはりパリッとした食感と、みっちり、もっちりした噛み応えを売りにしている。
このほか、複数店展開する中堅の店は、「H&H」(創業52年)、「エッサベーグル(Ess-A-Bagel)」(同48年)、「ピック・ア・ベーグル(Pick-A-Bagel)」(同36年)など数多くあるが、地元に根付いた小さな個人店も多い。
ベーグルは朝食に食べることが多いので、開店時間は午前6時から7時と早いが、閉店時間も午後2時半から4時と早い店が多い。
ベーグルは、半分に切ってクリームチーズを塗るのが一番シンプルな食べ方。刻みネギを混ぜ入れたクリームチーズも好まれている。卵、ハムやベーコン、チーズを挟んだベーグルは、朝食に人気だ。NYスタイルのベーグルは、重さが1個160gほどもあり腹持ちがよいので、通勤前やランチタイムは混雑する。スモークト・サーモン、トマトのスライス、ケイパーを挟んだ「ロックス」は定番中の定番だが、白身の魚やチキンやツナのサラダなども人気。つぶしたアボカドとさいの目に切ったトマトにレモン汁とスパイスを振りかけたものは、オープン・サンドイッチにすることが多い。各店では工夫を凝らしてメニュー展開している。