外食の潮流を読む(116)都心ドミナント展開を行うことでブランド浸透と生産性向上を追求

2025.02.03 552号 11面

 2017年以来、東京・表参道で「Bistro plein」を営んでいたPLEIN(代表/中尾太一、以下プラン)が23年12月、銀座7丁目に新築された銀座高木ビルに移転して、「プラン銀座本店」(客単価:ランチ8000円、ディナー1万8000円)、「フレンチバルギンザ by plein」(同:ランチ2500円、ディナー6000~7000円)、さらにサウナ「サロン・ナインティワン」を設けた。

 ここに出店することになったのは、代表の中尾氏(32歳)が3年半前に高木ビル代表の高木秀邦氏からこのビルの構想を聞き「プランの本店として入ってほしい」と請われたことがきっかけとなった。

 ビルは12階建てで、うち5フロアをプランの施設が占めている。また24年1月、虎ノ門ヒルズステーションタワーに出店。さらに6月、京都に出店、と短期間に劇的に新しい体制を整えた。現在は直営9店舗となっている。

 同社の9店舗のうち、路面店は基本的に週2日、店を休んでいる。虎ノ門ヒルズの店でも同社の事情を理解してもらい、出店までスムーズに進んだ。

 プランのミッションは「外食産業を憧れる職業に」ということ。今回の銀座高木ビルの計画は、これを一層推進していくために決断したことで、「働き方」に主眼を置いて考えたという。それは、銀座本店、銀座の1階、その11階・12階にサウナ、さらに虎ノ門ヒルズをオープンするなど、銀座のビル1棟の中と近郊を含めてドミナントを展開した。選択と集中をしながら増店も行った。

 銀座の場合、9階の銀座本店のフレンチと1階のフレンチバルという具合に業態を変えているのは、営業のピークタイムが重ならないようにするため。フレンチのピークは18時~19時で、バルは少し遅れて19時30分あたり。そこで一つの例として、最初9階に正社員を6人集めて圧倒的なおもてなしを行い、その後19時30分頃から、このメンバーはさっと1階に降りる、という具合に、同じビルの中の2店舗を回している。

 サウナも同様。スタッフが清掃のルーティンを終えたら、レストランの洗い場に入る。これによって洗い場が滞ることがなくなる。中尾氏は「当社が誇るところは、絶対にアルバイトのシフトカットをしないこと。早上がりはない。全体の仕事が最適に存在している」と語る。

 銀座のシフトに、タクシー利用で5分の距離にある虎ノ門ヒルズの店も組み入れている。こうして、このエリア全体で労働時間を管理して生産性を高めている。「従来であれば50人くらいでやらないといけないことを40人くらいでやる体制が整ってきた。一人一人に払っている人件費の額は外食産業の中では高く、休みもとれている。しかし、売上げに対しての人件費総額はかなり低いと思う」と中尾氏は語る。

 このようにプランでは、都心の中でドミナント展開をすることによって、ブランドの浸透と生産性向上の2つを推進している。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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