外食の潮流を読む(121)地元・川崎でドミナント店舗展開 炉端焼きの強さを知り和食に注力
川崎駅の東口方面にある仲見世通り界隈は、近年飲食店街として充実してきた。さる2月18日、このエリアに「蕎麦と焼鳥 富治TOMIJI」(以下、富治)という店がオープン。この飲食店街に「和食が目立つ街」という印象をもたらすようになった。
「富治」を運営するのは(株)Sunrise(本社/川崎市川崎区、代表/菊池厚志)で、同社にとって9店舗目になる。「富治」の向かい側には、同社の旗艦店舗である「魚炉魚炉 総本店」がある。9店舗中8店舗が川崎駅近くで営業している。
「富治」は、同社が既存業態で培ってきた「焼き」と「そば」のノウハウを合体し、昼も夜も稼働できる業態として考えられた(現在ランチ営業は行っていない)。また、同社では海外出店も計画していて、和食の定番メニューがすべて揃った「ザ・和食」の業態で挑戦しようと考えていた。
Sunrise代表の菊池氏(35歳)は地元・川崎の出身。20歳の頃から飲食業を志して飲食業に従事。24歳の時に川崎で独立、開業した。菊池氏は独立に際して「5年間で5店舗やろう」と目標を立てた。当時、川崎に炉端焼きがないことに気づき、知人の炉端焼きの店を手伝って、その技術を習得した。こうして2018年1月に京急川崎駅の近くに炉端焼き「魚炉魚炉」をオープンした。
この店はたちまち繁盛店となった。一時は8店舗に広げたが、コロナ禍で4店舗に縮小した。
ここで菊池氏は、改めて「炉端焼きの強さ」を感じ取ったという。店を閉店していく一方で、「魚炉魚炉」には底堅いものがあった。そこで、「自分たちは炉端焼きが得意だ」と、意識を傾けるようになった。
20年11月、仲見世通りと交差する近くに、路面で38坪の新築物件が出た。ここでSunriseは勝負に出る。コロナ禍だが、早速物件を獲得。そして「空家賃を払わないで、得意な業態で商売を始めよう」と、営業を開始した。
24年5月には、「魚炉魚炉総本店」近くの地下1階に「川崎 魚炉魚炉寿し」をオープン。「魚炉魚炉」の認知が広がった。
また、コロナ禍にあって、QSCを強化した。「環境整備点検」という名称で、菊池氏をはじめとした幹部社員が、毎月全店舗を回って店舗の状態をチェックするようになった。さらにMS(覆面調査)を行って、お客さま満足度を数値化。MSの数値が低い場合は「お客さま満足の改善」に取り組んだ。
「これらを継続して、リピートが増えて、売上げも上がりました。社員向けにマネージメントゲームの研修も行いました。このような地道な研修を毎月行なうことによって、社員のレベルも向上し、整っていきました」(菊池氏)。
社員の採用は、アルバイトから社員になる事例が増えてきている。直近1年間で7人がアルバイトから社員になった。
コロナ禍にあって、Sunriseの前向きなチャレンジは、社風の中に「良い循環」をもたらしている。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)