ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(72)大戸屋 日本の定食屋、アメリカに進出

2013.02.04 407号 08面
「鮭西京焼き定食」

「鮭西京焼き定食」

落ち着いたモダン和風の店内

落ち着いたモダン和風の店内

 ニューヨークに登場した日本の定食屋、「大戸屋」。オープン以来、連日、長いときは2時間待ちの行列ができる盛況ぶりだ。在ニューヨーク日本人にとっては、なつかしい日本の定食が食べられる貴重な場所。日本食といえば寿司を連想するアメリカ人には、新しい食体験を提供している。(外海君子)

 ●連日行列の人気 寿司以外の和食、アメリカに定着か

 入り口から、高級日本料理店のたたずまい。まずは、左手にカウンターバーがあり、その向こうに食事のできる客席がある。吹き抜けになった2階にも、客席があり、間接照明のなかなか落ち着いた雰囲気である。ここが、連日行列のできる大戸屋ニューヨーク店だ。オープン当初は、日本の定食がなつかしい日本人客が9割を占めていたが、徐々に現地の人々の割合が増え、今現在は非日本人は4割ほど。いずれは逆転するかもしれない。広告や宣伝をしているわけでなく、口コミで知られ、開店前から行列ができ、開店と同時に店がいっぱいになるという盛況ぶりだ。長いときは2時間待ちになることも。

 メニューの中に、日本にはない寿司をチョイスの一つとして入れてあるのも、日本と聞けば寿司を思うアメリカ人に対する配慮だった。が、蓋を開けてみれば、当のアメリカ人も寿司でなく、定食を注文して食べている。日本人客とアメリカ人客の嗜好の差はないという。おいしいものに国境の垣根はない。一番人気の「しまほっけ定食」は、脂ののったボリュームのある焼きホッケに、温かい味噌汁、ほかほかのご飯、漬け物や茶わん蒸し、野菜の副菜などが付いて、日本の味を満喫でき、在ニューヨークの日本人を感動させる。

 日本では日常的に利用できる店としての位置付けであるが、当然ながら、和食を日常食としないアメリカ人にとっては、普段でない特別な食事をするところである。食べるために食べる場所でなく、食べるのを楽しむ場所を提供する必要があり、見た目に感動がないと、満足してもらえない。そこで、量は日本の約2割増し。品数も多く、手間のかかる茶わん蒸しまで付いている。したがって、値段も、日本よりも高め。昼の定食でも、15$から18$する。丼物でも、18$から20$。日本にはないバーカウンターもあり、酒のメニューも、日本各地の吟醸酒、純米酒、にごり酒の他、焼酎も取り揃えている。

 ボリュームたっぷり、高級イメージの落ち着いた和風インテリアの店内でゆっくりお酒を飲みながら楽しむ日本の定食。

 アジアに進出した大戸屋であるが、欧米はまずはここニューヨークで足がかりをつかみ、マンハッタンであと2、3店舗展開してブランドイメージ作りをしてから、将来は、ヨーロッパへも展開していく予定だ。日本のラーメンに続き、日本の定食がアメリカに根付くか。同店に関する現地の人々のオンライン上の書き込み評価を見てみても、なかなか好評である。アメリカナイズされない、正真正銘の日本の定食屋は、健闘している。

 ●人気メニュー5

 「しまほっけ定食」(昼18$、夜20$)

 「サバ塩焼き定食」(昼15$、夜17$)

 「トンカツ定食」(昼16$、夜18$)

 「チキンのかあさん煮定食」(昼15$、夜17$)

 「牛タンの塩こうじ焼き丼」(昼18$、夜20$)

 ●事業データ

 大戸屋(Ootoya)/所在地=8W 18th St New York, NY 10003/開業日=2012年4月/営業時間=月~金 昼:午前11時半~午後2時半、夜:午後5時半~10時半 土・日 昼:午前11時半~午後3時 夜:午後5時半~10時半/席数=62席/客単価=昼20$、夜35$

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