アポなし!新業態チェック(73)「マリアーノスパゲッティ」日本橋兜町店
○サイゼリヤ、再びFF挑戦 メニューも立地も新たに都内に出店
昨年の9月、東京・日本橋兜町の飲食店などが建ち並ぶ一角に、小型のパスタ専門店がオープンした。一度は撤退を発表していたサイゼリヤのスパゲティ専門店の新業態である。
「マリアーノスパゲッティ」という名称で、兜町エリアの中でもよく知られた交差点の角地に立地する。客席数は20席に満たない超小型店だ。
パスタのメニューは、同社お得意の「ミートソース」「たらこソース」「カルボナーラ」「ペペロンチーノ」などといった6種類だが、既存のサイゼリヤ業態で出されているものとは具材などが少し異なっている。価格は麺の量に合わせて、Sサイズ(200g)290円、Mサイズ(300g)390円、Lサイズ(400g)490円という3種類から選択するスタイルだ。その他、午後2時以降には「イタリア産ミラノサラミ」「バッファローモッツァレラトマト」「やわらか青豆とソーセージ」のようなおつまみにもなる一品を各240円という価格で提供。「生ビール」(280円)や「ワイン」(120mlが100円、250mlが180円)も販売する。
店舗は、イタリアンカラーの赤色とは少し異なるマゼンタを基調としたカラースキームでまとめられ、カウンター席とハイスツールでひとり客に対応するコンパクトなレイアウト。ロゴマークも現代風のおしゃれなデザインだ。
同店の店名は、創業者の正垣泰彦会長がイタリアで感銘を受け、同社の社員も毎年訪れているローマのレストランから名付けられたもの。ファストフード業態にチャレンジを再開した同社の動向が注目される。
★けんじの評価
サイゼリヤは、ハンバーガー店などを含めて、過去何度もファストフード業態に挑戦しているが、そのすべてが多店舗展開にまで至らず、一時はそうした業態から撤退を発表していたはずだ。しかし、昨年の外食市場の低迷を背景に、やはりファストフードしか打開の道はないと判断したのだろう。
今回の同店は、まだ八王子のSC内に1店舗だけ残っている既存パスタ業態「サイゼリヤEXPRESS」のバージョンアップであるらしいが、店名もメニューもまったく一新して、立地も新たに開発した新業態だ。店内の客席レイアウトは、ひとり客を想定しているため連れ立った利用は難しそうだが、商品のコストパフォーマンスはやはりサイゼリヤならでは。料理の中身もサイゼリヤ本体とは微妙に異なり、オリーブオイルやペコリーノチーズも使い放題というぜいたくさで、魅力は十分にある。
ちなみに、某グループに加盟する外食チェーンの多くが、小売業との競争が激化して売上げを落としているという趣旨の発表をしているが、果たして本当にそうなのだろうか。消費者は本当にそういう基準で外食の選択をしているのだろうか。外食側が小売業を「競合」として仮想敵化してしまえば、戦略的な選択肢として外食の優位性を発揮できなくなるのではないか。それは外食が自ら負け戦に挑んでいることのように思われてならない。
われわれが「外食に行く」というとき、それは「モノ」を買いに行くのではない。「外食」という経験を買いに行くのだと考えれば、また少し違ったアプローチがあるような気がしてならないのだが。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。
●店舗概要
開業=2012年9月13日/所在地=東京都中央区日本橋兜町16-4