外食の潮流を読む(107)「焼肉きんぐ」に続く物語コーポの成長業態が新立地開拓し躍進
物語コーポレーションは今、「焼肉きんぐ」を郊外ロードサイドで勢いよく展開している。2023年6月期では同社売上高922億7400万円の中で「焼肉部門」が488億5200万円で52.9%を占めている。24年2月末現在で318店舗となっている。
この成長著しい同社に、新たな業態が現れた。それは「焼きたてのかるび」。カルビ丼と韓国スープの店である。1号店は21年8月に愛知県豊橋市にオープンし、24年3月には18号店となる小金井貫井南店をオープンした。
同社、焼きたてのかるび事業部長の笠原浩揮氏に、この業態の開発の経緯と展望について話を聞いた。以下に紹介しよう。
開発の発端は、焼肉店の食事は4000円程度になることから、そうした「焼肉の味」をワンコインで提供できたら「革命的ではないか」と業態設計を進めていった。
メインターゲットは30~40代の男性だが、女性が一緒に来ても注文に困らないメニューラインアップを考えた。そこで焼肉店らしくごちそう感が高い「ユッケジャンスープ」をもう一つの名物商品とした。「焼きたてのカルビ丼」(並)はコンセプト通りに490円に設定した(現在は税込み550円)。これらに焼肉定食、盛岡冷麺を加えて「焼肉店ベース」のバラエティーを整えた。客単価は850円から900円あたりとなっている。
笠原氏はこう語る。
「ファストフードに近い商売ですが、小さい箱ではなくカジュアルレストランの居心地のよさを感じさせる適度な広さ。接客の要素が少ないが、オープンキッチンで従業員がてきぱきと働いている様子が見えることで安心感を抱いていただく。キッチンからお客さまに爽やかにお声がけをする。このようなことを心掛けています」。
標準店舗は35~40坪、駐車場(20台)を入れて敷地300坪で月商900万円を想定。出店立地は、同社の「焼肉きんぐ」「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」と同じ郊外ロードサイドで当初展開していたが、「これまでのノウハウがあまり通用しない」と考えるようになった。
「焼肉きんぐ」は15万人商圏であるのに対し「焼きたてのかるび」は5万人商圏、1店舗当たりの利益額は圧倒的に「焼肉きんぐ」の方が高いが、店を3倍つくることによって「焼肉きんぐ」のような利益額を出すことができる。
これまで展開して見えてきた「適地」とは、ロードサイドでも住宅街が張り付いたエリア。これで、売上比率はテイクアウト45%、イートイン55%となっている。
ドライブスルーを併設すると駐車場は標準店よりも少なくて済む。これは本来テイクアウトを目的としたお客がドライブスルーに流れることが要因。この場合の売上比率はドライブスルー25~30%程度、イートイン50%程度となっている。いずれにしろ、テイクアウトに強い業態である。主要顧客は2~3km商圏の客で、リピートしてもらうことが重要。
笠原氏は「5年間で100店舗体制を目指していきたい」と語る。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。