外食の潮流を読む(115)四川飯店グループが若手を主役とするイベント開催し交流を活発化
昨年10月19日(土)、「赤坂四川飯店」(民権企業。本社/東京都千代田区、代表取締役社長/陳建太郎)で「未来シェフへの道 特別編~若きサービスマンの1ページ~」が開催された。タイトルに「特別編」とあるのは、これまでこのイベントは同社の若い「シェフ」が主役となって4回開催してきて、5回目となる今回は、初めて「サービスマン」が主役となって開催したことから。お客の前で、若いサービスマンが自分たちで構成した2時間30分の宴会シーンを体験した。
ここで主役を務めたのは、福本晋さん(赤坂四川飯店、勤務歴10年)と長谷部智也さん(同店、勤務歴7年)の2人。3ヵ月前に主役を担うことになったことを幹部社員から告げられた。以来、この日の宴会プロデュースについて、2人でアイデアを出し合い、上司にアドバイスを仰ぎながら想定する宴会シーンをまとめ上げた。
会場のお客は40人限定で一般募集(会費8000円・税サ込み、乾杯ドリンク付き)で参加した人たち。それぞれが赤坂四川飯店のファンのようで、満席の状況の中で宴会がスタートしてからすぐに和気あいあいとしたムードが漂った。
宴会が始まる前に、長谷部さんが自ら考案した「乾杯ドリンク」をステージ上で披露。複数のシャンパングラスに柑橘系を搾ったジュースや炭酸を組み合わせて作っていった。いざ乾杯。これから提供される料理に期待が募った。
この日のコースメニューは、四川飯店の料理の象徴「陳麻婆豆腐」をメインにしたスタンダードな全7品。大皿で運ばれた料理は、テーブルでサービススタッフが取り分けてくれた。
宴会も終盤になり、代表の陳さんが登場。来場のお客にそれぞれ声を掛けていく。お客は、おなじみの人が多いようだ。
ちなみに「未来シェフへの道」のこれまでの開催は次のようになっている。
第1回=2023年11月23日(木)・赤坂四川飯店。第2回=24年1月25日(木)・スーツァンレストラン陳 渋谷。第3回=24年3月20日(祝・水)・赤坂四川飯店。第4回=24年9月7日(土)・赤坂四川飯店。
第4回までの主役は、勤務歴6年から12年の料理人であった。陳さんは、このイベントを開催した狙いと意義をこう語る。
「それはずばり、職場におけるコミュニケーションづくりです。同じ店の中では、先輩後輩の年齢層が違うし、同世代となると店舗が違ってなかなかコミュニケーションがとれない。ですが、このイベントがきっかけとなり、同じ店の中とか、店が違う同じ世代のコミュニケーションが生まれて、情報交換など新しい場面での交流が始まったり。良いつながりが生まれている」。
飲食業の中でも、専門料理の店ではとりわけ厳しい徒弟制度が存在していたと認識していたものだが、この「未来シェフへの道」は会社を挙げて若手を育てる姿勢を示して、「ファミリー」としての意識を芽生えさせているようだ。職場環境のあるべき姿を感じた。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。