フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(30)ジーテイスト 3社合併のシナジーを生かせるか
●日本一の多業態チェーン
おそらく、わが国で最も多くのレストラン業態を有する外食企業、その数なんと44業態、店舗数は800店を超えているのがジーテイストの姿である。これほどの多業態かつフランチャイズまで展開している外食チェーンはなく、地味な存在ながら外食業界を代表する1社であるともいえる。
●3社合併の結果
同社は昨年8月、旧ジーテイスト(「仙台平禄」「とりあえず吾平」など)を存続会社として、旧さかい(「焼肉さかい」「大阪カルビ」)、旧ジーネットワークス(「長崎ちゃんめん」「おむらいす亭」)のジーコミュニケーショングループの外食企業3社(いずれも上場企業)が経営統合して新ジーテイストが発足したというややこしい経緯がある。しかも経営統合前の旧3社も、それぞれの社歴の過程で買収や合併を繰り返してきており、外食業界関係者の間でも少々混乱を招いている。
母体となった旧ジーテイストの場合、元は「仙台平禄」という回転寿司チェーンからスタートし、いわくつきの元ゼクー社から「とりあえず吾平」を買収、循環取引でJTグループ入りした「加ト吉」からは「村さ来」を買収し、「ちゃんこ 江戸沢」を展開していたグローバルアクトや、旧タスコシステムからは「暖中」「ヤマダモンゴル」を買収するなど、まさに「清濁併せ呑む」M&Aを繰り返してきた。
また、さかいとジーネットワークス(元「パオ」)も、それぞれ創業者がジーコミュニケーショングループに売却した後、「おむらいす亭」の買収やグループ内の再編などで業態を増やしてきたのである。
●合併の結果と親会社とのシナジーを生かせるか
外食における多業態チェーンは、お客さまにさまざまな価値を提供できる機会が業態の数だけ多いという点から見れば、ハンバーガーや牛丼など単独や少ない業態で展開しているチェーンよりも有利にも見える。
しかし、その一方で店のコンセプトからメニュー構成、オペレーションまで違うため、一般論としては集客には強くてもコスト高になりがちと考えられている。
このコスト高に関しては、同社は昨年、親会社がジーコミュニケーションから「業務スーパー」を全国展開する神戸物産に変わったことで、食材の仕入れは親会社ルートを活用した「規模の経済」のメリットが徐々に表れてくるものと思われる。
問題は、3社の統合効果が果たして発揮されるのかにある。同社の現代表は旧さかいの杉本社長であるが、同時に代表権はあるものの副社長に事実上「降格」となった稲吉副社長は、旧親会社ジーコミュニケーション創業者の実弟という関係である。
これに、前述のM&Aを繰り返してきた3社の歴史、つまり、さまざまなルーツを持った複雑な人間関係のグループが、入り混じっているのが今のジーテイストなのである。
「企業の歴史は社員の歴史」という観点からすると、経歴も実績も社会人として育まれた環境も違うメンバーを、いかにベクトルを合わせて成長軌道に乗せていくのか。
経営陣に課せられたミッションは、決して容易なものではないであろう。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。