外食史に残したいロングセラー探訪(20)ミカド珈琲店日本橋本店 コーヒーゼリー/モカソフト

2008.07.07 344号 12面

 日本で初めてのスタンド式コーヒーショップとして1948年に創業し、今年60周年を迎えたミカド珈琲店。やわらかな酸味が特徴の「日本橋ブレンド」などのコーヒーはもちろんのこと、同店オリジナルのコーヒーゼリーやモカソフトなどのスイーツも人気があり、スーツ姿のサラリーマンがモカソフトを片手に…という光景も珍しくない。

 日本初の1カップ30円のスタンド式コーヒーショップの創業をはじめ、独創的なアイデアをつぎつぎと形にしていったミカド珈琲店の創業者、金坂景助氏。「コーヒーゼリー」は、「コーヒーを食べることはできないか」という金坂氏の発想から研究開発が始まり、1963年に生まれた商品だ。

 発売当初は現在の4倍もの大きさの特製ドリップ用ヤグラを使って大量に原液を作り、さらに当時は板状のゼラチンしかなかったため非常に手間がかかり、1日100個の限定販売であったという。

 「市販されているコーヒーゼリーの中では、一番苦いのでは」と、日本橋本店、店長の木村正典氏。8段階ある焙煎のうち一番苦みの強いイタリアンローストをメーンに、コーヒーゼリー用にブレンドした豆を、香りとコクを引き出すために細かくひき、一晩かけて水出しする。そして時間をかけてゆっくりと固めて味を閉じ込め、クリアな色あいと味わいのコーヒーゼリーが出来上がる。

 スプーンで触れると揺れる硬さは見た目にもおいしく、口に含んだときの食感は適度に弾力がある。すっきりとしたのど越しで香りもよく、まさに「コーヒーを食べている」感覚だ。さらにブランデーを数滴たらすと、香り豊かな大人の味が楽しめ、自家製ガムシロップや乳脂肪分30%のミルクを加えると、苦みが程よく抑えられる。

 一方、「ミカド珈琲のモカソフト(R)」の誕生は、1969年。大人に連れられてきたものの、オレンジジュースぐらいしか注文できる商品がなく、つまらなそうにしている子ども客の様子を見た金坂氏が「子どもにも楽しめる商品はないだろうか」と、考案したのが始まり。

 当時10歳ごろであった金坂氏の長女、現(株)ミカド珈琲商会・代表取締役の鳴島佳律子氏は、「プール1杯分も試食させられた」というエピソードもあるほど何度も試作が繰り返された。そして、ミルクに負けないよう、しっかりとした味を出すために濃い焙煎の豆を使い、ネルドリップで落としたコーヒーの苦みと、ミルクの持つほのかな甘みがマッチし、舌触りの滑らかなモカソフトが完成する。

 現在でも天候にかかわらず、1日100食以上販売され、繁忙期の軽井沢の店舗では1日1000食以上売れることもあるという超ヒット商品である。

 「『若いころ、近くで働いていて懐かしくて』とお孫さんを連れて来店し、これらの商品を楽しむお客さまも少なくない」と木村氏。金坂氏のアイデアから生まれた「コーヒーゼリー」と「モカソフト」は、世代を、そして時代を超えて愛される真のロングセラー商品だ。

 ●店舗データ

 「ミカド珈琲店 日本橋本店」/経営=(有)ミカド珈琲店/店舗所在地=東京都中央区日本橋室町1-6-7/開業=1948年4月/営業時間=月~金 午前7時~午後8時、土曜 午前8時~午後6時、日・祝日 午前10時~午後6時(いずれも閉店30分前LO)/坪数・席数=約34坪(1~3階)・60席(2~3階合計、1階はカウンターと丸テーブル2脚だけ)/客単価=500円(2~3階)/1日来店客数=600人

 ◆こだわりの食材

 ミカド珈琲店のコーヒーに「やわらかな酸味」という特徴を付け、モカソフトやコーヒーゼリーにも使われているのが、メキシコ産コーヒー豆「ラ・タサ」。金坂氏が世界中の産地を訪ね、たどりついたこの豆は、現在、山の斜面にある契約農園で作られており、すべて手摘みされている。いい豆づくりのために生産者とのコミュニケーションを密に取り、年に約17tを輸入している。

 同店では「脇役」にも手を抜かずに工夫を懲らしており、例えば、コーヒーゼリーのシロップは、グラニュー糖と水だけでミキサーを使い、熱を加えずに「水冷式」で作るオリジナルのガムシロップである。また、モカソフトをカップで注文すると添えられるプラムは、乾燥の種なしプラムを自家製シロップで煮たもの。「このプラムを販売してほしい」との要望が多く、現在では催事などで限定販売している。

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