外食史に残したいロングセラー探訪(21)ロッテリア「エビバーガー」

2008.08.04 345号 12面

 菓子メーカーである(株)ロッテが、「直接、お客さまと接したい」との思いを込め、“ロッテのカフェテリア”として「ロッテリア」をオープンさせたのは、1972年9月のこと。その5年後に発売された「えびバーガー」は、今年「絶品チーズバーガー」が発売されるまで、約30年間、売上げトップを続けた超人気商品だ。

 「ロッテリア」第1号店の開店当時、扱っていたバーガーメニューは「ロッテリアハンバーガー」「チーズハンバーガー」「デラックスハンバーガー」「イタリアンホット」のわずか4種類。売れ筋商品はドリンク類が中心で、喫茶店の延長としての利用が多かったようだ。

 そのため、「ハンバーガーショップとして認知してもらえる商品」、つまりヒット商品の開発が必要不可欠であったという。

 新商品の開発にあたり、アメリカからのレシピやノウハウを日本に持ち込んだ他社との差別化を図るためにも、「日本で生まれたハンバーガーチェーン」として、日本人の好きな食材を使ったハンバーガー作りがテーマとなる。そこで、昔から祝いの席をはじめ、多くの場面、そして調理法で食べられてきた「エビ」に着目し、「えびバーガー」の開発がスタートした。

 だが、商品化までには、エビだけではボリューム感を出しづらかったり、当時の冷凍技術では衣が取れやすかったりなど、さまざまな問題点があったという。パティとなる小エビと魚のすり身の配合や、パン粉の大きさや輸送方法など試行錯誤が続けられた結果、100号店オープンの直前、77年2月に「えびバーガー」が完成し、販売が始まった。

 当時は、各店舗でソースなどを仕込んでおり、ホワイトソースに入れる玉ネギを大量にみじん切りにするために、厨房には涙防止用の水中メガネが欠かせなかったという逸話もある。

 「レストランとは違い、その場で出来たてを食べるお客さまだけではなく、持ち帰って食べる方もいる。だからこそ『すべてのお客さまにおいしく食べていただけるには』を常に求めています」と、(株)ロッテリアフードサービス・商品本部・商品開発チーム・チームリーダーの永島俊和氏。そのため、「えびバーガー」は誕生以来、エビの品種やパン粉の種類など、常に進化を続けている。現在使われているエビは、インドネシアなど東南アジアの指定産地で養殖されたバナメイ種。ちなみに、異物混入のクレームの原因となりやすい背ワタは、すべて1匹ずつ手作業で除いてある。

 「今年発売した絶品チーズバーガーの人気を見ると、今後ますます、来店動機となる商品の開発が必要になると感じる」と永島氏。そうした商品となるべく、さらに進化した次世代エビバーガー登場の日もやって来るかもしれない。

 ●店舗データ

 「ロッテリア」/経営=(株)ロッテリア/本社所在地=東京都渋谷区笹塚1-64-8 笹塚サウスビル4階/第1号店開業=1972年9月/店舗数=529店舗(2008年5月末現在)

 ◆エビバーガー・クロニクル

 1977年:「えびバーガー」誕生

 1990年:女性のみのプロジェクトーチームが開発した、業界初しっぽのついたえびバーガー「カイザーサンドシュリンプ」発売

 1992年:ホワイトソースの生玉ネギが「辛い」という声が多く、タルタルソースに変更

 1999年:エビの大きさをアップ

 2000年:衣を生パン粉に変更。エビをピンク種とブラックタイガー種の50:50に

 2001年:パン粉をさらにサクサクに。エビをブラックタイガー100%に

 2002年:ふっくらクープバンズ採用。ソース、衣、エビのプリプリ感すべてをアップ

 2003年:ライ麦バンズを採用し、リニューアル。これを機に商品名の「えび」をカタカナに変更

 2005年:エビのパティをさらに生かすためゴマバンズに。同時に「シェフのエビバーガー」発売

 ◆こだわりのエビ・パティ

 エビのすり身だけで作ったパティも検討されたこともあったが、エビのにおいが強く、冷めたときに磯臭いということで却下。現在は白身魚のすり身に、舌触りをなめらかにするために少量の鶏肉を混ぜたパティが使われている。また、食感をよくするために粗さの異なる生パン粉をブレンドしたものを使い、サクサク感にこだわる。

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