電化厨房最前線:早野商事「La cucinna HANA(ラ・クッチーナ ハナ)」

2008.10.06 348号 22面

 千葉県内を中心に、和食店、豚カツ店、ビュッフェレストランをはじめ全49店舗を展開中の早野商事(株)。同社が手がける初めてのイタリアンレストランとして、「ラ・クッチーナ ハナ」が開業したのは3年前のこと。千葉市郊外の1700坪の広大な敷地に建つ一軒家レストランであり、同社の電化厨房導入の第1号店だ。この事例をもとに、同社では業態ごとの電化が検討され、徐々に取り入れられているという。

 2005年10月にオープンした「ラ・クッチーナ ハナ」は、早野商事(株)の持つ、魚を市場で直接買い入れる権利を生かして、千葉産の鮮度のいいシーフードをメーン食材としたイタリアンレストランである。

 何よりも雰囲気を優先したという店づくりは、よく手入れのされた広大な庭、天井高6mの客席、そしてオープンキッチンと開放感がある。最近では、こうしたロケーションを生かしてブライダルも手がけており、需要が増えてきている。

 「これまで和食店を中心に店舗展開をしてきたため、なかなか電化に踏み切れずにいました。しかし、同店は料理の特性上からもそれが可能であり、また、約130坪という大型店舗ですから、いかに初期投資を抑えるかという点からも電化厨房を選択することとなりました」と、店長の十二町賢氏。

 こうして、電化厨房導入第1号店となった同店だが、実は「オール電化」ではない。本格的なナポリピザを作るために、ピザ釜だけはガス式の石釜を使用しているのだ。

 そのためにオール電化としての申請はできず、特典を受けられなかったが、ランニングコストを含めた数値面、快適な職場環境といった非数値面などトータルで見た結果、電化厨房を採用したことで得たメリットは大きかったという。

 「これだけの大きさのオープンキッチンを持つイタリアンレストランは珍しいと思います。それが実現できたのは、排熱や放射熱が少ない電化厨房ならではでしょう」と十二町氏。

 さらに同店は、客席の天井高6mと空調の効きづらい造りだ。「ですから、もしこれが電化厨房ではなかったらと思うとゾッとします」(十二町氏)。また、大掛かりなダクトが必要ないことも、雰囲気優先で作られた同店にとっては大きなメリットであったようだ。

 同店の初期投資は2億5000万円。うち、厨房設備費は約1400万円。導入した電化厨房機器は、IHレンジ8口、パスタボイラー2台、オーブン2台、スチームコンベクションオーブン、フライヤー、グリラー各1台である。

 中でも使用頻度の高いIHレンジについて、料理長の林田潤氏は、「例えばガスの場合、パスタがゆで上がる時間を計算してソースを温め始めましたが、IHはゆで上がった直後にソースを火にかければいい。それぐらい、立ち上がりの時間に差がありますね。また、種火を常に点けている必要もなく、スイッチ1つで簡単に立ち上がるのも大変便利です」と、立ち上がりの早さを絶賛する。「ささいな積み重ねですが、こうした調理時間の短縮は、コスト低下にとても効果的です」(十二町氏)。

 同店での事例をもとに、同社では徐々に他店舗でも電気機器を取り入れ始めている。例えば、和食店では鍋物などを提供する際に卓上IHコンロを、ビュッフェレストラン「奈のは」では、ビュッフェ台に電気式ウォーマーを使用している。また、11月中旬には山梨県甲府市内に、オール電化店舗の「奈のは」(FC)がオープン予定だ。

 ◆現場のコメント:ラ・クッチーナ ハナ 林田潤料理長 電化式のオープンキッチンは客席への影響も心配なし

 立ち上がりの早さは、実は「焦げさせやすい」というデメリットにも…。しかし機器に慣れ、使いこなすことで、そうした問題もすぐにクリアできましたし、沸点調整など電化機器ならではの利点も調理に生かせるようになりました。

 常にお客さまの目を意識しなければならないオープンキッチンという環境だからこそ、暑くなく快適に働けることは大きなメリットですし、安全面や衛生面においても電化厨房の優位性を実感しています。

 ダクトの汚れ方が明らかに少ないことからも、オープンキッチンであっても客席への熱や煙、においといった影響はほとんどないと考えられるでしょう。また、ゴトクに鍋底が当たる音などがしないので、「静かさ」も電化厨房の特徴の1つだと思います。

 ◆店舗メモ

 ◇「ラ・クッチーナ ハナ」/所在地=千葉県千葉市若葉区若松町1-1/坪数・席数=130坪・130席/営業時間=(平日)午前11時~午後4時、5時~11時、(土・日・祭)午前11時~午後11時/平均月商=3000万円/客単価=昼2100円、夜3500円

 ◇早野商事(株)/本部所在地=千葉県千葉市若葉区桜木6丁目19-75/事業内容=千葉県を中心として「波奈」(和食)、「かつ波奈」(豚カツ)、「奈のは」(ビュッフェレストラン)など49店舗を展開中。

 ◆千葉の海のめぐみを、惜しみなく 「大原産伊勢エビのグリル サラダ仕立て」(時価3,000円~)

 千葉県大原産のとれたての伊勢エビをグリルし、シンプルに塩・コショウで味付け。仕上げにはハンディタイプのバーナーを使い、焼き目をつけている。鮮度のいいシーフードをメーン食材とする同店の代表的なメニュー。

 これまで和食店を中心に展開してきた同社だが、イタリアンレストランが加わったことで、異業種店舗間でのメニュー交流が盛んに行われるようになり、それぞれ料理に幅が出てきたという。

 ◆使用機器紹介:ニチワ電機(株)「IH調理器(MIR-1035TA)」

 保温をはじめ、料理の下ごしらえ、湯沸かし、煮込み、炒め物など、さまざまな加熱料理に大活躍するIH調理器。立ち上がりの早さ、そしてハイパワーの火力で調理時間の大幅短縮を実現。もちろん、火力は火力調整つまみによって、無段階に調節することができる。調理プレートがフラットなので、汚れはダスターでさっとふき取ることができ衛生的。消費電力=三相200V/3000W・5000W

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