メニュートレンド:国産大豆の豆乳とおからをたっぷり使用「はらドーナッツ 神戸本店」
神戸の下町、湊川に2008年5月に誕生し、昔懐かしい素朴な味わいの手作りドーナツが話題を呼んでいる。その店は「はらドーナッツ 神戸本店」。わずか3ヵ月後の8月下旬には、東京の吉祥寺と阿佐ヶ谷に出店。オープン時には神戸本店同様に行列ができた。並んででも食べたいドーナツの魅力とは。その秘密を探ってみた。
食の安全が揺らいでいる今、「子どもに安心して食べさせられるおやつ」をコンセプトに、「おいしさ、健康、安心」を実直に突き詰めたドーナツ、それが「はらドーナッツ」だ。
作り方は普通のドーナツと変わらないが、牛乳ではなく豆乳を使い、生地にたっぷりのおからを練り込んでいる点が最大の特徴だ。また、小麦粉は薄力粉、強力粉、それに薄力粉の3倍の食物繊維と鉄分を含む全粒粉の3種類を配合。いずれも味わい深い国内産小麦100%を使用し、素朴でやさしい、それでいてモチッとした自己主張のある食感を演出している。
さらに、上白糖よりも甘みを感じる三温糖を使用することで、糖分とカロリーをセーブ。甘さ自体もかなり抑え気味で、それが生地の味わいを強調している。ベーキングパウダーも、アルツハイマー病との関連が一部で指摘されているアルミニウム(焼きみょうばんに含まれる)の無添加にこだわっているほか、卵も箸でつかめる黄身をもつ栄養価の高い赤卵を厳選している。
こうして、ありそうでなかった、作れそうで作れない、なのに誰もが懐かしいと感じる「小さいころにお母さんが作ってくれたようなドーナツ」にたどり着いた。
店主の岡井健氏は、「ヘルシーで栄養価が高い豆乳とおからを使うアイデアは、前々から温めていた」という。そこで、同店のコンセプトにふさわしい豆乳とおからをいろいろ探していくうち、やはり素材にこだわりながら伝統的な製法を守っている神戸・湊川の原とうふ店と出合った。
「あちこちの豆乳とおからで試作しましたが、私のイメージど通りの、いやそれ以上においしいドーナツに仕上がったのがここの豆乳とおからだったんです」と岡井氏。
原とうふ店との出合いなしには生まれなかった商品だったことから、店舗にもドーナツにも「はら」と命名した。
現在、フル回転で1日約1000個のドーナツを作っているが、閉店前に完売してしまうことも珍しくない。取材中も子ども連れの母親、買い物帰りの老夫婦、外回りの営業マン、女子高校生など、文字通り老若男女がひっきりなしに来店。平日にもかかわらず、1時間足らずの間に4~5人の行列が3度ほどできた。
今後については、私たちの考えをもっともっと広めたいものの、「目の行き届く直営店展開にこだわっていく」と岡井氏。まずは現在の3店舗をしっかり固めた上で、次のステップに踏み出す計画だ。
◆「はらドーナッツ 神戸本店」
店舗所在地=神戸市兵庫区荒田町2-20-109、電話078・511・2800/開業=2008年5月/営業時間=午前10時~午後7時ごろ(売切れ次第終了)/坪数=約8坪/スタッフ=5~6人
●愛用食材:原とうふ店(神戸市兵庫区)「豆乳・おから」
国産大豆の甘みが凝縮
神戸・湊川の市場で営業を続ける「原とうふ店」は、輸入大豆を一切使用せず、北海道産の「大粒鶴の子大豆」、高知・室戸の「海洋深層水」、赤穂産の「天然にがり」など、国産の良質な素材を厳選。1968年以来、昔ながらの製法でずっしりと重みのある本物志向の豆腐を製造・販売し続けている。その大豆の甘みと風味がギュッと詰まった無調整豆乳と、食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富なおからは「はらドーナッツ」を「はらドーナッツ」たらしめている食材。東京の2店舗にも、毎日作りたてを直送している。