外食史に残したいロングセラー探訪(32)ロイヤルホスト「パンケーキ」

2009.08.03 360号 12面
「パンケーキ」

「パンケーキ」

 ここ数年、パンケーキ専門店が増えているが、ロイヤルホストのパンケーキは実に30年以上もの歴史を持つロングセラーメニューである。「ロイヤルクラシック」の冠にふさわしく、オーダーが入ってから1枚ずつ丁寧に焼き上げられるパンケーキは、朝食や喫茶需要が特に多く、常に上位10位前後をキープする人気商品でもある。

 日本のファミリーレストランの草分け的存在である「ロイヤルホスト」は、1971年福岡県北九州市に第1号店を開業し九州地方を中心に展開。その後、1977年に首都圏進出第1号店となる三鷹店を出店した。「パンケーキ」が登場したのは、その翌年、同社が日本の外食企業として初の上場を果たした1978年のことだ。

 「当時、自動車社会の到来に備えて主要道路沿いに郊外型ファミリーレストランの展開を進めており、アメリカのコーヒーショップを参考としていました。これらの店舗ではすでにポピュラーであった『パンケーキ』を、ロイヤルホストの朝食メニューに導入したのが始まりです」と広報部・古城尚之氏。

 オーダーを受けてから1枚ずつグリドルで焼き上げるスタイルは、発売当初から採用していたという。

 そして1984年には「ディモズパンケーキ」と名称を変更。これは、アメリカの外食業界で第一線として活躍したのち、1980年から同社の顧問を務めていたスタン・ディモズ氏から「表7・裏3」という焼き方のコツを教わったため。創業者の故江頭匡一氏にとっても、このパンケーキは思い入れのあるメニューの1つであったようで、当時の社内報にはパンケーキを例に「ロイヤルの哲学」を解説する原稿が掲載されている。

 その後、1994年3月のメニュー改訂時にパンケーキを大幅に改良。より食感をソフトに、ふっくらとさせるために、原材料の配合や調理マニュアルを変更し、焼き上がりは直径13.5cm、厚さ10mm(従来商品は直径12.5cm、厚さ7mm)とボリュームもアップした。

 さらに販売促進の一環として「おいしい食べ方」を提唱し、テーブルマットに掲載するなどの試みも行った。その食べ方とは、まず、(1)パンケーキ1枚1枚にパンケーキホイップ(ホイップバター)を塗り、(2)パンケーキを再び重ね、重ねたまま十文字にナイフを入れる。(3)さらにナイフを入れ8等分し、(4)メープルシロップを上からまんべんなくかけ、(5)1ブロックを3枚まとめて食べる、といったもので、現在でもこの食べ方にこだわる常連客も少なくない。

 今年3月からは、「ロイヤルホストパンケーキミックス」を店舗売店にて販売を開始した。

 「ご家庭で手軽に楽しんでいただきつつ、『プロの味も食べたい』という来店動機にもつながればと考えています」(マーケティング部・勝亦美佳氏)

 これからも、「パンケーキを食べにロイホに行こう」というファンの期待に応え、品質を守り続けていくことだろう。

 ●店舗データ

 「ロイヤルホスト」/経営=ロイヤルホールディングス(株)/本社所在地=福岡県福岡市博多区那珂3-28-5/第1号店開業=1971年12月/店舗数=299店舗(2009年5月末現在)

 ○パンケーキ・クロニクル

 1978年 モーニングメニューに導入

 1980年 グランドメニューに導入(※当時の価格:パンケーキ250円、ソーセージまたはベーコン付き430円)

 1984年 「ディモズパンケーキ」に名称を変更

 1992年 「Mr.ディモズパンケーキ」に名称を変更(※現在は再び「パンケーキ」を採用している)

 1993年 「グランドスラムパンケーキ」(目玉焼き、ソーセージ、ベーコン付き)登場(※現在は販売中止)

 1994年 パンケーキを大幅に改良アメリカ「iHOP」の商品を参考に、「ストロベリーパンケーキ」「シナモンアップルパンケーキ」も登場(※現在は販売中止)

 2009年 「ロイヤルホストパンケーキミックス」発売

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら