メニュートレンド:パンにキムチ?食べれば病みつき!キムチサンド 「珈琲館ロックヴィラ」
焼き肉店や韓国食材店がひしめき合う、国内最大級のコリアンタウン「大阪・鶴橋」。その鶴橋の名物として独自の地位を確立しつつあるのが、「珈琲館ロックヴィラ」の「キムチサンド」だ。一度は味わってみたいと思わせるインパクトのある発想と、病みつきになる味で、固定ファンを増やし続けているこのメニュー。他店の類似メニューを寄せつけない「独自のおいしさ」を探ってみた。
「パンにキムチを挟む」というアイデアは、いったいどこから生まれたのだろうか。ロックヴィラのオーナー岩村瑛子さんによると、「食欲がなかったある日、コーヒーを飲みながら軽くつまむピリッとしたものが欲しい」と思ったのがきっかけだったという。
さっそく家にあったキムチをパンに挟んでみるものの、イメージしていた味とはまったく違った。それでも、「せっかく思いついた鶴橋らしいアイデアを何とか商品化したい」と、粘りに粘った岩村さん。試行錯誤の末に、ようやく納得できるキムチサンドにたどり着いた。
それが、「こんがり焼いたバタートーストにマヨネーズを塗り、キュウリ、ロースハム、特製キムチ、軽くマッシュしたゆで卵、そしてもう一度キュウリを重ね、最後にパンで押さえる」というもの。具材の種類、量、重ねる順番……すべてにこだわりがある。
さらに、キムチそのものにもさまざまな工夫を凝らしている。まず、地元鶴橋の決まった店から仕入れる白菜の浅漬けに、独自の味付けをほどこし2~3日寝かす。それを細かく刻み、1食分ずつ丁寧に手で絞っていく。この“絞り”が非常に重要で、少しでも気を抜くとキムチサンドの最大の敵である水っぽさが出てしまう。だからといって、固く絞ればいいわけでもない。
「圧縮機を使えば簡単に絞れますが、何かが違うんです。同じ固く絞るのでも、弾力のある人間の手で包み込むように絞った方がやっぱりおいしい……。おかげでけんしょう炎が治るひまがありません(笑)」(岩村さん)
地元の常連客に親しまれているほか、鶴橋に来たら5食、10食と必ずおみやげに買って帰る人など、とにかく固定ファンが多いロックヴィラのキムチサンド。百貨店の催しに出店したときの売上げ数は、1週間で4000食に達した。
その味は、キムチサンドという言葉から連想しがちなアクの強さはなく、シャキシャキとしたキムチの食感と、マヨネーズで程よく和らげられたピリカラが非常にさわやか。キムチが苦手な人、野菜嫌いの子どもにも人気があるというのもうなずける。
今や焼き肉に次ぐ大阪・鶴橋名物といえるキムチサンド。「刻んだり絞ったりと結構な力仕事ですが、これからもけんしょう炎にめげず当店ならではの味にこだわっていきます」とのことだ。
◆「珈琲館ロックヴィラ」/店舗所在地=大阪市東成区東小橋3-17-23、電話06・6975・0315/開業=1979年ごろ/営業時間=午前8時~午後6時半、水定休/坪数・席数=20坪・25席/1日来店客数=150~200人
◆愛用食材:特製キムチ キムチサンド用に加工したオリジナルの味と形
キムチサンドのキムチは汁をほとんど絞り取るため、味がやや染み込んだもののほうが合う。そこで仕入れた白菜の浅漬けキムチに数種類の調味料で企業秘密の味付けを加え、2~3日発酵させる。その後包丁で細かく刻んでから、1食分ずつ手の平に挟んで絞っていく。細かく刻むことで絞りやすくなる上に、シャキシャキとした食感も増す。1食分のキムチの重量は、絞る前で約120g。野菜がたっぷり取れるヘルシーさも人気の理由の1つだ。