近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:神奈川県湯河原町「担々やきそば」 B級グルメで街おこし
“ご当地焼きそば”を掲げた街おこしがにぎわう中、神奈川県湯河原町の「担々やきそば」がひときわ脚光を浴びている。「担々やきそば」は、練りごまや豆板醤などをベースとした香ばしいピリ辛の味わいが特徴。この、ありそうでなかったクセになる味わいは、湯河原町商工会で定義づけられたもので、現在、町内飲食店の有志がメニュー化に協賛している。2008年の始動以降、東京圏からの至近立地も追い風に、日帰り観光客やメディア取材が急増。焼きそばの新ジャンルを切り開くとともに、メニュー化は全国区へ波及している。
「担々やきそば」による街おこしは2008年2月、東京の奥座敷として名高い湯河原温泉の地域活性化と、観光客誘致を目的に始まった。湯河原温泉には「タヌキが見つけた温泉」という伝説があり(別掲参照)、親しみやすいタヌキの歌、「たんたんタヌキの……♪」から“担々(タンタン)焼きそば”が考案された。
調味の開発にあたっては、担々麺のレシピを参考に練りごまと豆板醤のブレンド比率に注力。湯河原町に近い調味料メーカーと共同で試作を重ねた結果、万人受けする味づくりとレシピの標準化に成功。この商工会認定のレシピをもとに、約36店の協賛店が独自の隠し味を加えてバラエティーを競っている。
また、当初から、湯河原町にまつわる素材を活用した系統も定義づけている。
「湯河原柑橘系」=地元で取れたレモンや清美オレンジなどのかんきつ類が添えられたり、隠し味に用いられている。
「温泉玉子系」=温泉で賑わう湯河原の地を表現し温泉卵がのっている。煮卵、ゆで卵、目玉焼きなどのアレンジもある。
商工会一丸となった試みにより、B級グルメ目当ての日帰り観光客、伊豆・熱海観光の寄り道客が増加。メディアでも多数取り上げられ、わずか2年足らずで「担々やきそば」の知名度はメジャーと化した。かたや業務用食材市場では、この成功例にあやかった担々焼きそば専用の調味料が開発・発売され、焼きそば差別化の即戦力として好評。いまや居酒屋や惣菜など各方面で採用され、定番の地位を築き始めている。
◆湯河原町のタヌキ伝説 傷を癒やし湯の恩を説く
湯河原に1匹の雄ダヌキがおり、ある日、地元民が狩猟の弓でタヌキを傷つけた。雄ダヌキは湯の湧き出る所を見つけ傷を癒やしていると、同様に足にやけどを負った雌ダヌキが浸かりにやって来た。2匹のタヌキは傷を癒やしに通ううちに恋仲になり、夫婦となった。2匹はこの湯の恩を忘れることなく人に化けては湯河原の温泉のすばらしさを説き、今でも湯を守り続けている。
◆担々効果で常連客急増 野菜500gのボリュームに脚光 「高松食堂」
湯河原駅から約1kmの住宅地に立地する「高松食堂」は、担々やきそばの街おこしで恩恵を受けた店のひとつ。野菜たっぷりの「担々焼きそば」(600円)が話題を呼び、B級マニアのブログなど多くのメディアで取り上げられ、集客、売上げともに以前より3~4割アップしたという。
食堂を手がけて約40年の河西孝店主は、「うちみたいな大衆食堂の場合、人気料理の目安は日販3食以上。でも、担々焼きそばは平日でも5食以上、休日だと10~20食も出ます」と明るい表情。
さぞかし一見客で盛況かと思いきや、「むしろ地元の常連客が急増しました」と店主。
「試しに来店した地元のお客さんは、担々焼きそば以外の料理も注文されます。うちの料理は価格とボリュームが自慢。それに満足された多くのお客さんが再訪されますね」と声を弾ませる。
担々焼きそばは、持ち前の魅力をアピールする格好の機会となり、いまや昼も夜もにぎわいが絶えない。
◇高松食堂(所在地=神奈川県足柄下郡湯河原町中央4-10-2)
◆エバラで再現!模擬レシピ
■使用食材(1人分)
豚ひき肉(50g)モヤシ(100g)ニラ(長さ4cm20g)赤パプリカ(薄切り5g)白髪ネギ(5g)中華蒸し麺(1玉)担々焼そばのたれ(60g)サラダ油(適宜)
■作り方
(1)鍋に油を熱し、野菜と中華麺を炒め、担々焼そばのたれ40gを加えて炒め、皿に盛る。
(2)同じ鍋で豚肉を炒め、担々焼そばのたれ20gを加えて炒め、(1)にのせる。
(3)白髪ネギをトッピングする。
◆使用食材:エバラ食品工業(株)「担々焼そばのたれ」
練りごまの香ばしさとがらスープのうまみに、豆板醤のピリ辛とリンゴ酢の酸味を加えた担々焼そばのたれ。クセになる複雑な味わいとおいしさで、新たな焼きそばを提案。
規格=常温1470g×6本