関西版:関西拠点の外食各社2010年計画 単一業態の勝利か 業態集約・もうかる仕組み作りへ

2010.01.04 367号 25面

 餃子の王将、丸亀製麺など、単一業態が驚異的な伸びを見せた09年。多業態展開を進めていた外食企業も今後はブランドの集約を進める方針を打ち出している。関西拠点の外食各社の2010年計画を見てみる。

 558店舗を展開するグルメ杵屋は、うどん、そば、丼、洋食、アジアの5業態である約40ブランドを、1業態につき2ブランド程度に集約し、ブランドをスリム化する。さらに社員に「のれん分け」する経営委託制度を導入し、赤字100店舗を来秋までに解消する。

 酔虎伝や八剣伝など居酒屋で694店舗展開のマルシェも、既存店・既存業態の回復を優先課題にしながら、社員の独立を推進している。ブランドコンセプトも見直し、酔虎伝はなにわの大衆居酒屋色を色濃くし、八剣伝は炭火焼を極め、女性がターゲットの居心伝は少量多品種と鉄板メニューにテコ入れしている。

 「本部任せの店舗運営をやめたい」と、各社は経営能力のある店長を求めている。FC制度やのれん分けは昔からある制度だが、単純にFC店舗を募集するとブランドが崩れる恐れもある。そのため、各社は店長経験年数などで一定の基準を設けながら、社員の独立を促す。地域に密着した外食店運営には本部主導型からの逸脱が求められる。店長が裁量権を持ち店舗を運営し業績を伸ばす餃子の王将方式だ。

 今上期の餃子の王将は、直営店の既存店売上げが19.4%増と26ヵ月連続で前年をクリアし、なんと10月は25.2%増で着地した。外食離れの時代には、どこに行っても平均点をクリアする無難な創作居酒屋ではなく、「今日は○○を食べたい」とはっきり外食に向いたニーズをきっちりつかまなくてはならない。「どこに行こうか」と悩ませずに、店員やウリのメニューによってお客を引き寄せる単純明快さが求められる。

 一方で直営店にこだわるのは今上期に81店舗を出店した丸亀製麺。11月にセルフうどん初の300店舗展開を突破し、3月末で321店舗に拡大する。1杯280円の釜揚げとかけうどんを主力とし、1号店出店からわずか9年で業界ナンバーワンの座に着いた。CKを持たない店舗内調理で、15年3月期の1000店舗達成を狙う同社は本部主導の完全マニュアル化と素早い設備投資が必要という。

 最後に注目すべき企業は08年6月から業務改革室を立ち上げた209店舗展開のサトレストランシステムズ。重里欣孝社長が「和食FRチェーンは今までと違う発想で経営をしていく必要がある。外食産業の中でも特に和食は労働分配率の高い業態だ。厨房での作業を簡略化し、生産効率を上げてコスト圧縮し、国内の和食FR業界で高収益ナンバーワンを目指す」と、来期末までに形づけるのは、毎年2%ずつ損益分岐点を下げ、4年後に最大12億円の利益を上げる計算式。

 具体的には、1億円を投資し全店舗に導入した無沸騰ゆで麺機でガス代は70%に、水代は10%に圧縮した。また、歩留まりの良いマイクロ炊飯器の導入も進めている。1台50万円だが、炊飯コントロールにより品質が安定し歩留まりも良くなる。無洗米が採用できるので水使用が減少するだけでなく、ガス炊きよりも劣化率が低いので年間5000万円あったコメロスも解消する。

 管理面では機械化と簡略化を推進し、ウイークリーマネージメントを導入。週単位で客数分析し、商品発注と人事コントロールを行いコストを圧縮する。

 「売上げの伸びが期待しにくい時代は高収益の和食業態をつくることが先決。出店体制への基盤作りを進めるためにもまず“売れなくてももうかる仕組み作り”が最優先だ」と重里社長が言うように、企業化した外食産業でも個店単位の力が試される1年になりそうだ。

 ※展開店舗数はいずれも09年9月末日現在。

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