外食史に残したいロングセラー探訪(39)味の民芸「民芸ちゃんぽんうどん」

2010.04.05 370号 12面
和にとらわれない自由な発想でのメニュー開発のきっかけとなった、大切な一品

和にとらわれない自由な発想でのメニュー開発のきっかけとなった、大切な一品

岡山県倉敷の街並みから着想を得て、なまこ壁などを用いた店舗づくりとなった

岡山県倉敷の街並みから着想を得て、なまこ壁などを用いた店舗づくりとなった

 昭和50年代前半、うす味だしのうどんを主力に、ばら寿司やかやくご飯のセットメニューなど、関東圏ではまだ珍しかった味わいをいち早く紹介した手延べうどんの「味の民芸」。すき焼き風の濃い味付けが好まれ、ピーク時には3分の1のお客が注目した「肉すきうどん」と並び、「民芸ちゃんぽんうどん」も30年以上続くロングセラーメニューであるという。

 ◆アルバイトの失敗から味の方向性が決定

 「味の民芸」の始まりは、味の民芸フードサービス(株)の前身、(株)マックの時代のこと。乾麺の商品開発の情報収集のために訪れた岡山県で手延べうどんに出合い、ほれ込んだ先代の社長が、1976年に第1号店を岡山県内にオープン。その2年後の1978年には関東進出1号店となる八王子店を出店した。

 八王子店の立ち上げに参加した営業指導部の鶴田博喜部長によると、そのころのメニューは、ごく一般的なうどん屋のものであったが、関西風のだしに慣れていないお客からは「これがうどんなのか?」といったクレームも多かったようだ。

 そして、ちょうどそのころ、関東でも人気の出始めた長崎ちゃんぽんに注目した社長からの、「これをうどんのメニューとして取り入れられないか」とのひと言から、新商品の開発が始まったという。

 「ちゃんぽん独特の白湯スープではなく、醤油だれのスープで具材たっぷりのちゃんぽん風うどんを目指したのですが、ツルツルした手延べうどんはだしがからみづらく、なかなか味がなじまず苦労しました」(鶴田氏)

 そんなある日、アルバイトが手順を間違えて熱した中華鍋に直に醤油だれを入れて調理したところ、焦げた醤油の香ばしさが立ち上った。そこで、あらためて中華鍋で醤油を熱して香ばしさを出し、これにごま油でコクと香りを加え、塩・コショウで味を調えると、スープとうどんがうまくからんだという。そして1983年に「民芸ちゃんぽんうどん」の提供がスタートする。

 発売当初から具材をたっぷりと使っており、現在は白菜、ニンジン、小松菜、エビ、イカ、豚肉、さつま揚げ、三ツ葉、白ネギの9種類である。

 この「民芸ちゃんぽんうどん」の開発がきっかけとなり、現在では「トマト&チーズうどん」「かに玉スープうどん」「ジャジャ麺風肉味噌うどん」など、うどんの概念にとらわれず、和・洋・中の味をアレンジしたさまざまなメニュー提案を行うようになる。

 30年以上も続くロングセラー商品ではあるが、時代に合わせて、常にブラッシュアップを行う。塩分を気にする傾向が見られる最近では、極力塩分を抑え、いかにうまみを出すかに力を入れている。

 今後、原点ともいえる「民芸ちゃんぽんうどん」を、さらに広い層にアピールしていきたいという。

 ●店舗データ

 「味の民芸」/経営=味の民芸フードサービス(株)/本社所在地=東京都立川市錦町3-6-6/店舗数=「味の民芸」70店舗ほか(2010年1月現在)

 ●ちゃんぽんうどんシリーズ

 「民芸ちゃんぽんうどん」を基本として、ほかにもちゃんぽんうどんシリーズを展開している。

 1986年から販売を開始した「長崎ちゃんぽんうどん」は、パート社員からメニュー開発のヒントを募った結果、「牛乳ベースの白湯スープ」を採用して生まれたメニューであるという。現在は、さらにコラーゲンを加えて、女性客からの支持を得ており、全メニューの中で人気第2位をキープしている。

 ほかに「ぴり辛ちゃんぽんうどん」や、今年2月からは、若い男性客をターゲットに「野菜たっぷりちゃんぽんうどん」も新しくラインアップしている。

 また、プラス100円で野菜の量を2倍にするサービスも開始し、好評とのことだ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら