高齢者向け弁当宅配特集:ワタミタクショク、1日12.9万食超に
◆“元気な高齢者社会”のビジネスモデル目指す
ワタミグループは08年に長崎県のタクショク(当時1日約3万食)をグループ化して高齢者向け弁当宅配事業に参入し、09年にワタミタクショクとして合併、10年度は関東、関西に36の営業所(関東20ヵ所、関西16ヵ所)を開設して約150営業所体制で一気に食数を09年比倍増の1日12.9万食の目標を掲げているが、早くも達成のめどがついたもようだ。
同社は介護付き有料老人ホーム「レストヴィラ」52施設を運営し、「介護施設に入れない人のための支援」(ワタミ広報グループ長斎木雄二氏)の意味も込めて、経営者の高齢化によるタクショクからの事業継承申し込みを受け、08年にM&Aを行った。
09年度は高齢者向け弁当宅配ビジネスの成長に向けた事業整備として商品開発部門の東京集約、グループのノウハウ活用によるブランドリニューアルとしておかずの品数を増やし、容器も替えた主力の「まごころ御膳」(日替わり弁当、1食当たり税込み540円)は、主食のご飯と4~5品のおかずで500kcal基準、塩分3g以下、食材は15品目以上使用と改良した。
注文は5日分(5食)で1人用2700円、2人用5000円から受け付け。6種類以上のおかずだけの「まごころおかず」(1食当たり570円、5日分1人用2850円、2人用5300円)も用意している。
10年11月には兵庫県丹波市に1日1万食、12年には関西エリアに3万食を提供、約200人雇用予定の新工場が完成予定だ。
1日当たり平均食数と売上げは、09年2月4.5万食43億円、10年2月6.1万食101億円、11年2月12.9万食162億円(見込み)とこの2年で急伸している。
高齢者向け弁当宅配の最大の課題は配達だ。1食当たり540円には配達料金も含まれている。ワタミタクショクの最大の特徴は、元気な高齢者が弁当を製造・配達して高齢者が喫食するという、元気な高齢者社会のビジネスモデル的位置付けのシステムだ。
配達する人を「まごころさん」と呼ぶが、まごころさんは自分のライフスタイルに合わせて都合のよい時間に都合のよい時間の配達が可能で、働き具合をコントロールできる。鹿児島県の76歳のまごころさんは自前の車で毎日午前10時から約3時間で27件に弁当を配達する。
「お金が欲しいというより、ただ健康で働くだけ」と、社会参加できる喜びがますます元気を引き出しているようだ。熊本の63歳のまごころさんは、毎日50軒に運ぶ。留守の時には一筆添えて保冷ボックスのまま置いていく。お金の使い道は、孫の小遣いだ。
また弁当宅配の営業所運営は売上げや人の管理、地域密着など外食店舗運営およびサービスノウハウがそのまま応用できるために、人材が営業所開設のペースに追い付いているのだという。1営業所は社員1~2人で、配達は50~60歳代が主流のまごころさんで構成される。配達は、まごころさんの自家用車にワタミタクショクのマグネットシールを張って配達する。
宣伝は地域への折り込みチラシだけで、ここまで順調に食数を伸ばしてきている。喫食する高齢者の平均は約71歳という。月曜日から金曜日分を、前の週に前金で集金する。
今後の展開としては、首都圏の拡大を中心に13年度1日50万食の配達を目標にしている。
ワタミグループのビジネスは「生産(農業・1次産業)」「加工・流通(2次産業)」「店舗・施設・宅配(3次産業)」の合計6次産業からなり、生産から一貫して食材・献立・製造・宅配の安全安心を確保できる仕組みが強みだ。