USA発この新食材に注目!:分子ガストロノミー調理サイエンスの調合剤「テキスチュラ」

2011.05.02 386号 14面
空気をポンプで送り込んで、さまざまな泡を作る

空気をポンプで送り込んで、さまざまな泡を作る

 この食材を紹介する前に、まず分子ガストロノミー、もしくは分子調理法(molecular gastronomy)なるものを紹介しなければならない。分子ガストロノミーは、物理や化学を調理に使って、味覚だけでなく、嗅覚、視覚、食感などさまざまな感覚の最高のコンビネーションを構築するサイエンスのことだ。

 知る人ぞ知る、世界一予約の難しいレストラン、スペイン・バルセロナから200km近く離れた海岸沿いの田舎にある「エル・ブリ」は、レストラン・マガジンで世界一の座についた著名なレストランで、シェフのフェラン・アドリア氏は、液体窒素などさまざまなサイエンスを使って分子ガストロノミーを実践している。一年の半分しか開店しておらず、閉店中の半年間は調理の研究に使い、その厨房はまるで実験室だ。開店期間中の8000人分の予約には200万の希望が殺到し、たった1日で半年分の予約が埋まってしまうという伝説的レストランだ。今年7月には閉店し、2年後に調理学のシンクタンクとして生まれ変わるようだ。

 技術、コンセプトの研究が調理のピラミッドの頂点にあるとする、この世界最高峰のレストランで使われている食材が、この「テキスチュラ」だ。例えば、乳化するテキスチュラの粉末に、スープ、果汁など好みの液体を加えて、ポンプで空気を送り込むと、仕様によってさまざまな硬さの泡を作ることができる。他にも、球状化、ゲル化、乳化、濃厚化などの作用のあるテキスチュラがある。テキスチュラ自体は無味(味付きのものもある)なので、使用する液体の味が付くことになり、したがって、球状化するテキスチュラをイチゴ果汁に使えば、イチゴ味のキャビアを作ることだってできるのだ。

 アドリア氏は、テキスチュラによって、熱いゼラチン、さまざまな泡、メロンのキャビア、球状のラビオリなど、エル・ブリのテクニックを再現できると言い、テキスチュラを「無制限の可能性を追求できる魔法」と呼んでいる。

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