メニュートレンド:豚平焼きの串バージョン 豚平串「コアラ食堂」

2011.06.06 387号 02面
串に刺すという“ひねり”によって、見慣れた「豚平焼き」が別物に変身した「豚平串」。奥の「バラ肉のフルーツトマト巻き」は、熱を加えることで甘味を増したトマトのジューシーさと肉の濃厚さの組み合わせが絶妙

串に刺すという“ひねり”によって、見慣れた「豚平焼き」が別物に変身した「豚平串」。奥の「バラ肉のフルーツトマト巻き」は、熱を加えることで甘味を増したトマトのジューシーさと肉の濃厚さの組み合わせが絶妙

ほのぼのとした空気が漂うレトロな店内

ほのぼのとした空気が漂うレトロな店内

 今や全国にその名が知られるようになった「豚平(とんぺい)焼き」。とはいえ、本場・大阪でのメジャーぶりは別格だ。豚平焼きがメニューにないお好み焼き店や居酒屋を探すほうが難しい。これだけ浸透していると、全体的に味のレベルが高く、差別化は困難。しかし大阪市北区の「コアラ食堂」は、その高いハードルをなんなくクリア。豚平焼きに加えた“ひとひねり”にカギがあるようだ。

 ◆片手で頬張る食べやすさが人気 厚切り肉で鹿籠豚(かごぶた)を堪能

 大阪の中心・梅田エリアに隣接する大阪市北区浮田には、古い町家を改装した飲食店や雑貨屋が並ぶノスタルジックな界隈がある。鉄板焼きとワインの店、コアラ食堂がその一角にオープンしたのは2009年4月。「まぼろしの黒豚」の異名をもつ「鹿籠豚」が食べられる店としても知られている。

 鹿籠豚は鹿児島県枕崎産のブランド豚で、数軒の牧場でしか育てられていない非常に希少な存在。知人を通して鹿籠豚のおいしさを知ったコアラ食堂のオーナー寺田充さんは、牧場主に直接掛け合い、独自の仕入れルートを開拓した。「脂身の甘さはもちろん、赤身部分の味が濃い」のが他の豚肉とは大きく異なる魅力だと言う。

 大阪で豚肉料理を出す以上、やはり豚平焼きは外せない。しかし、鹿籠豚を使うからには他にはない豚平焼きにしたい……。そこでひらめいたのが、“串に刺す”というアイデア。同店のもうひとつの売りであるワインと一緒に、「女性でも食べやすい一品に」が発想の起点だった。

 一口サイズに切った厚さ約1cmの鹿籠豚ロース肉を3切れ串に刺し、鉄板でじっくり焼いたのちにマヨネーズを加えた卵で丁寧に巻けば「豚平串」の完成。なるほどこのスタイルなら、ワイングラスを片手に頬張ってもさまになる。実際、「豚平焼きより食べやすい」「見た目も味も上品」と女性客だけでなく男性客からも予想を超える支持が集まり、来店客の約半数がオーダーする人気メニューになっている。約1cmの肉の厚みは、串に刺すのに必要なだけでなく、鹿籠豚のうまさをアピールする上でも功を奏している。

 また、フルーツトマトに鹿籠豚のばら肉をくるりと巻いて焼いた「バラ肉のフルーツトマト巻き」(400円)も、豚平串に並ぶ人気メニュー。トッピングはルッコラとペコリーノロマーノ。イタリア最古の羊乳チーズのコクのある塩気が、アクセントとして効いている。

 鹿籠豚という素材のよさに甘えることなく、その素材を生かす独自のアイデアと工夫で常連ファンを増やしているコアラ食堂。寺田さんにとってこの店はカフェに続く2店舗目で、今後も業態にとらわれことなく、自分のやりたい店を増やしていきたいと言う。

 ◆店舗情報

 「コアラ食堂」 所在地=大阪府大阪市北区浮田1-1-17、電話06・4980・4030/開業=2009年4月/営業時間=午後5時~11時半、月定休/坪数・席数=30坪・36席(1階・2階合わせて)/1日平均来店客数=30~40人

 ●愛用食材:「鹿籠豚(かごぶた)」

 鹿籠豚は日本初のブランド豚で、肥育後期にサツマ芋を混ぜたエサを与えているのが特徴。肉の繊維が細いために肉質が軟らかく、歯切れがよい。また、脂が溶ける温度が高いのでベタつきが少なく、脂身の甘味も、赤身のうま味も、さっぱりと味わえる。市場の評価が非常に高いにもかかわらず、飼育に手間がかかることから生産者は数えるほどしかいない。ゆえに「まぼろしの黒豚」と呼ばれている。

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