フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(1)赤字続きのグローバルダイニング

2011.07.04 388号 26面

 ●事業モデル転換で再起目指せ

 「4期連続」「44ヵ月連続」「15分の1」。これはすべてグローバルダイニングの数字である。

 同社は「ラ・ボエム」や「モンスーンカフェ」、ブッシュ大統領来日時に小泉首相が案内した「権八」などを擁し、1999年には東証2部にも上場している。

 わずか数年前までは外食市場の最先端を走っていた会社であり、長谷川耕三社長の自伝的書籍がベストセラーになるなど、上場から数年間は時代の寵児(ちょうじ)だった。それが今では「4期連続の最終赤字」「既存店売上高44ヵ月連続マイナス」「株価は10年前の15分の1」といった惨状である。いったい何が起こったのか?

 表の通り、2007年12月期の売上高169億円は、過去最高の業績であった。にもかかわらず純利益は3億円を超える赤字。以後、直近の2010年12月期まで4期連続の最終赤字が続いている。

 しかも、経常利益が黒字の期でも純利益は赤字。つまり毎期巨額の特別損失が発生している。原因は、同社の特徴である客席150~200席の大型店舗の不振により、いわゆる会計上の減損処理を余儀なくされていることにある。

 さらに国内60店舗のうち25店舗、つまり3分の1以上の店舗が赤字となっており、今年4月までの月次売上げ(4ヵ月)も昨対マイナス23%と回復のめどがたっていない。今期も赤字店舗の減損処理、特別損失の計上、最終赤字は避けられないのではないだろうか。

 同社はこれまで、新興企業としての魅力と、ストックオプションなどのインセンティブを武器に優秀なスタッフを集め、それが成長の原動力となってきた。だが、テレビドラマの撮影にも使われていた店舗もブームが一段落し、決して便がいいとはいえない1.5等地立地の弱さも表れてきている。また、リーマン・ショックによる株価低迷も打撃となり、せっかくのストックオプションもただの紙切れと化してしまった。

 そもそも、外食市場における優秀な人材の多くは将来の独立や起業、開業を目指していることが多い。それは同社を志望するスタッフについても例外ではない。2005年に創業時から長谷川社長の右腕だった新川氏(Huge)の退社をきっかけに、優秀な人材の退社が続いていることも業績低迷の大きな原因ではないだろうか。新川氏以外にもサイタブリアの石田氏、AWキッチンの渡邉氏、アメリカ屋の川島氏など、独立した元社員の成功事例は多い。

 再生するためには、ブームが去った業態の見直しが急務である。創業来、カリスマ経営者として長谷川社長個人の手腕に依存していたマネジメント体制も、この機会に透明性を向上させ、自由で前向きなアイデアが活発に交わされる社風に変えるべきであろう。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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