メニュートレンド:サソリとコウロギの串カツ 「串かつじゃんじゃん 新世界本店」
大阪名物串カツの発祥地として知られる新世界(浪速区)には、それぞれにこだわりをもつ串カツ屋が所狭しと軒を並べている。その中で常時100種類以上のメニューの豊富さを誇る「串かつじゃんじゃん」が、2011年6月、超刺激的な新メニューを登場させた。「チャレンジ串」と名付けられた「サソリ」と「コウロギ」の串カツだ。以来、テレビや雑誌などの取材が目白押しで、連日、予想を超えるオーダーが入っている。
◆見てギョッ! 食べてハッ!
じゃんじゃんが信条としているのは、「素材を生かした串カツ」。そのポイントは軽くて薄い衣で、小麦粉を水で溶いた「どろ」の濃度や付け方、油の吸いすぎを防ぐきめの細かなパン粉などに数々の秘策が隠されている。
そのじゃんじゃんは、さまざまな素材に挑戦することで串カツの世界を広げてきた。今ではおなじみになったつくねチーズ、じゃがバタチーズなどの「チーズ串」、チョコバナナ、カスタードプリン、ふわふわチーズケーキなどの「デザート串」などをいち早くメニュー化してきたのもその一例。店内には若い女性客の姿も目立つ。
そして今回目を付けた素材が、サソリとコウロギ。2010年10月に「変わり種」として羊、カエル、ワニの串カツを恐る恐る販売したところ、思った以上にすんなりと受け入れられた。そこで2011年6月、「チャレンジ串」と称してサソリ、コウロギ、ダチョウの3品を追加することにしたのだ。
とはいえ、「さすがにコレはきついだろうと思っていました」と揚げ師の上田浩也さん。しかしながら蓋を開けてみると、「1日各5本ぐらいの予想を超えるオーダーが入っています。それも女性のお客さんからの注文が、結構多いんですよ」。
味のほうはというと、「外はカリカリ、中はカニみそを濃厚にした感じ」のサソリが特に美味。グループで試しに1本頼み、そのおいしさに追加注文が入ることも少なくないという。
串カツは単純な料理のように見えて、実は「どろ」の状態やパン粉の種類、油の温度や揚げ時間などで食感や味わいが変わるデリケートな料理である。サソリやコウロギは見た目のインパクトを生かすと同時に表面をカリッとさせるため、衣は片面にだけ薄く付け、もう片面は素揚げに近い状態で提供している。
中までしっかり火を入れながら、揚げすぎないのがすべての串カツに共通する素材を生かすこつ。その微妙な加減は経験で身につけるしかないという。
平日午後2時~5時のアイドルタイムでも客足が絶えないじゃんじゃん。競争が激しい新世界で勝ち抜いていくには、味はもちろんお客をひきつける話題性が不可欠。今後も世間をあっといわせる串カツをじゃんじゃん生み出していきたいとのことだ。
●店舗情報
「串かつじゃんじゃん 新世界本店」 所在地=大阪府大阪市浪速区恵比須東2-4-16 電話06・6636・2901/営業時間=午前11時~午後11時(ラストオーダー10時30分)/休日=なし/坪数・席数=約28坪(1~3階合わせて)・56席/1日来店客数=平日150~200人(週末は約2倍)
●愛用資材・食材:食用サソリなど
信頼できる業者より確保
言うまでもなく、串カツじゃんじゃんで扱っているサソリ、コウロギ、ワニ、カエル、ダチョウ、羊などの食材は、すべて専門業者から仕入れている食用である。ちなみにサソリは、中国の薬膳料理にも使われる貴重な食材だ。「毒があるのでは……」と思う人もいるだろうが、食用サソリに毒はほとんど含まれていないので心配無用。それ以前にサソリの毒は針で体内に注入されてはじめて効力を発揮する神経毒で、口から摂取すると薬になるといわれているそうだ。