進化する人気定番!社員食堂最前線 盛り上がるラーメン開発 菅谷真由美氏に聞く
社員食堂のメニュー開発が熱い。栄養、価格、時短はもとより、いまや創作料理、バラエティー、エンターテインメントが求められ、それらを踏まえたメニュー開発は、ある意味、究極の課題となっている。中でもラーメンは重要なカテゴリー。「ラーメンが食堂評価を左右する」といっても過言ではない。事業所給食の大手企業である西洋フード・コンパスグループのメニュー栄養管理・担当部長代理の菅谷真由美氏に、社員食堂におけるラーメン開発の動向を聞いた。
◆ラーメンは月14万食超
–ラーメンの現状は?
菅谷 あまりラーメンを嫌いという人はいませんから、社員食堂などにおいても「なくてはならない」存在です。社員食堂運営を統括するB&Iセクターでは約800の事業所で食事を提供していますが、ラーメンなどの中華麺は月平均14万7000食以上。メニュー全体の出数でも7%以上を占めています。
–現状の課題は?
菅谷 ラーメンは他の飲食店の味と比較されやすく、販売価格の制約も厳しいですね。コスト管理を適正に行いながら、おいしさを追求していくのが課題です。
–食材選びは?
菅谷 味の柱となるものは独自開発したPBです。チルドの生麺、醤油、塩、味噌、豚骨、担々麺のスープなど。他の生鮮品などは一括購入して各事業所へ配送しています。
◆日替わり麺メニューは60品
–商品開発の現状は?
菅谷 レギュラーとなるのは醤油、塩、味噌、豚骨の4品。これに日替わりの麺メニューが約60品あり、4週間サイクルで展開しています。他にご当地ラーメンや名店監修ラーメンをスポットで提供したり、夏は冷やし中華やつけ麺、冬は温かいつけ麺など季節メニューもあり、どれも人気が高いですね。
–売れ筋メニューは?
菅谷 「とんこつ野菜ラーメン」や「酸辣湯麺」が断トツ。今夏もそれぞれ5500食以上出ました。3位以下と1000食以上の差をつけています。野菜がたくさん摂取できたり、お酢の酸味を利かせるなど、ヘルシー感を訴求したものは女性のお客さまにも人気が高いですね。
◆低塩低カロリーは社員食堂の使命
–ラーメンは不動?
菅谷 高いニーズがあることは間違いありません。ただし、ラーメンには別の課題もあります。企業さまは、健康増進法で従業員の健康管理に努めなければなりません。1食分の目安は脂質25g程度、塩分3~4gと厳しく、ラーメンで応えるのは簡単ではありませんが、逆にやりがいを感じる部分でもあります。
–低塩がポイント?
菅谷 現在、POPを制作中です。具と麺をすべて食べると塩分量とカロリーがどれくらいで、スープを半分飲んだ場合や全部飲んだ場合などで違いが一目で分かります。これをテーブルに置いて、召し上がる方に注意を促していこうと。食堂によって、穴あきレンゲスプーンで、スープを飲み過ぎないようにしているところもあります。また低塩低カロリーなスープの開発をメーカー各社と協力して続けています。事業所給食だからこそ取り組まなければいけない使命でもあるといえます。
●菅谷真由美(すがや・まゆみ)
管理栄養士。栄養士養成専門学校教員を経て、2000年9月に同社入社。2007年10月から現職。ヘルシーメニューの開発や健康管理に関するイベント企画、セミナー講師、個別栄養相談、社内の栄養士教育を担当。
●西洋フード・コンパスグループ(株)
オフィス、工場などの事業所食堂の運営を主力に、病院、高齢者施設給食、レストラン事業など多角展開。現在約1600ヵ所の事業所で食事を提供している。食堂で寿司の実演販売を行う「すしキャラバン」などを企画するなど独自展開や、レストラン事業で培った技術とノウハウを生かし、高い評価を得ている。2007年に(株)西洋フードシステムズから現在の商号に変更。同社が属するコンパスグループはイギリスを本拠地とし、世界50ヵ国以上で展開する事業所給食の世界最大手。
●人気ラーメン紹介
「とんこつ野菜ラーメン」参考価格410円 ※取材店舗での販売価格
豚骨ラーメンは以前から男性を中心に人気の高いメニューだったが、女性が昼食で食べやすいようにと3年前に開発した。脂やニンニクの風味を落としてさっぱりとした味付けにし、野菜をたっぷりとのせた、タンメンの豚骨バージョンだ。具材はモヤシ、ニンジン、玉ネギ、キャベツ、豚ひき肉、キクラゲ、万能ネギ。野菜は炒めた後140gと、これ1杯で1日に必要な野菜の約半分を取ることができる。麺は130g(生)
○西洋フード・コンパスグループ オペレーションサポート統括部 メニュー開発担当 中村英樹氏
なかむら・ひでき 1989年入社。「小吃坊」などの中華業態で料理長、調理指導、新業態開発などを担当。同社がコンパスグループに入った後、事業所給食の現場を経て、一昨年から現職。中華料理の商品開発、調理マニュアルの作成などに尽力。