看板料理に学ぶヒットの秘訣:ホワイト餃子・野田本店「ホワイト餃子」
普通のはずなのに普通でない。千葉県野田市のホワイト餃子・本店は文字通りのギョウザ専門店だ。メニューはギョウザ、漬け物の他はビールとソフトドリンクだけ。ただひたすらにギョウザを食べるお客でごった返す店内のさまは壮観の一言に尽きる。
この店の看板である焼きギョウザは10個で420円。やや厚めの皮で、包み方は中国東北部の典型的スタイルだ。弓型にヒダをつける日本式のギョウザとはかなり形状が異なり、一種、素朴な印象がある。あんは豚肉、キャベツ、ニラ、ニンニクなどが主体で、さほど個性的な味ではなく、むしろ普通の味だ。
やや特徴的とはいえ、皮もあんもこれほどのお客をつかむだけの魅力があるとは思えない。ホワイト餃子の最大の特徴はその焼き方にあるのだ。焼き上がりの見た目は普通の焼きギョウザとは全く異なり、揚げギョウザといった方がピッタリくるビジュアルだ。
実際、この店の焼き方は初めに熱湯をたっぷりと注いで厚めの皮を十分に軟らかくゆで、その後ギョウザがかぶるくらいの大量の油を投入。湯が完全に蒸発するまで強火で揚げ続けるという独特の手法だ。
もうひとつ重要な点は、ギョウザをピッチリと並べて、ブロック状にして焼くこと。このことで、ブロックの内側には油が入り込まず、モッチリと蒸し上げたような皮の食感が残る。外側のカリッと揚がった部分と内側のモッチリとした食感。この絶妙の食感バランスこそがホワイト餃子の真骨頂なのだ。普通の食材でも調理手法でここまで個性化できることに学びたい。
●店舗情報
「ホワイト餃子・野田本店」千葉県野田市中野台278
●プロフィル
押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。