フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(17)ひらまつ 高級業態でひとり勝ち
◆5期連続で増収増益
同社は、上場企業代表兼オーナーシェフという異例の肩書きを持つ平松博利氏が1982年に創業。主力の高級フレンチ業態「Hiramatsu」を中心として、同じフレンチ業態の「PAUL BOCUSE(ポール・ボキューズ)」「HAEBERLIN(エーベルラン)」「POURCEL(プルセル)」、これにイタリアン業態の「ASO(アソ)」「D&D LONDON」を加えた6業態を展開している。
いずれも、フレンチおよびイタリアン業態の中では立地、商品力、サービス、知名度すべてがトップレベルにある外食企業である。
これら高級レストラン業態に加えて、レストラン店舗を活用したウエディング、いわゆるレストランウエディングの先駆者としても、首都圏を中心に相応の知名度を有している。
業績面でも、2007年9月期(売上高78億円、経常利益3.6億円)から、直近の2012年9月期(売上高110億円、経常利益19億円)まで、実に5期連続で増収増益を続けている。長引く外食不況下にあって、まさに快進撃と呼べる成果ではないだろうか。
◆ウエディングとレストランの相乗効果
特に、最近の好調な業績の要因は、フレンチおよびイタリアンの高級店でありながら、客単価が2万円を切る絶妙な価格設定と、質の高い料理やサービス内容が満足感を高め、レストラン利用客が他のグループ店舗も利用するリピート増加につながっている。
これに加えて、婚礼組数の順調な増加と、婚礼の主催者や参加者を含めたウエディング利用客が、挙式以後もレストランを利用するなど、ウエディング需要をレストラン需要にうまくつなげていることが大きな勝因となっている。
さらに、最近の円高ユーロ安を活用して、使用する食材や備品類のコスト削減を図っていることも収益拡大に寄与しているようだ。
◆快進撃は続くか?
レストランもウエディングでも勝ち組にあるという、ここ最近の外食業界では類いまれな企業ではあるが、冒頭の「上場企業代表兼オーナーシェフ」が示すように、創業者の平松社長への依存度が高い企業体質であることは否めないであろう。
これを感じるのは、同社の複数の店舗を利用するとすぐに分かるのであるが、一言でいうならどこのお店も雰囲気が極めて近いのである。
実際、筆者もフレンチとイタリアン双方に加え、招待された挙式会場として同社店舗におけるウエディングも経験しているが、店舗内装や什器備品、もちろん料理の内容もそれぞれ違うのだが、フレンチとイタリアンという業態の近似性を考慮しても、初めての利用ながら「ここ来たことあったかな?」と思わず勘違いしそうになるような同質な空気感を感じるのである。
もちろん、似た雰囲気ということは決して悪いわけではなく、それが利用客の安心感につながりグループ店舗のリピーター化にも貢献しているのであろうが、いずれ需要が一巡した時に、急に客足が遠退くことは、かつて「マキシムドパリ」や「シェ松尾」が経験したことを思い起こすのである。
●フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。