プロの食材活用この食材でこの逸品:林原「トレハ」 いまやトレハは仕込みの“基本調味料”
トレハロース(製品名・トレハ)とは、自然界に存在する糖質のこと。以前から、和菓子を中心とした食品業界では、トレハが持つでんぷんの老化やタンパク質の変性を抑制する効果や保水性などが注目されていたが、最近、寿司業界でにわかに注目度が高まっている。「食」に携わる者の中でも、自分の仕事の流儀に人一倍こだわりを持つ寿司職人に、今、“トレハファン”が急増している。
●ガンコな寿司職人も納得の効果 1度使ったら手放せない
「とにかく、だまされたと思って、一度使ってみてほしい」とトレハにほれ込んだ、「能登寿司」の中田秀人店主は薦める。今では「トレハなしの仕込みは考えられない」とまで言う中田店主だが、5年前、トレハの製造販売元である林原が主催するセミナーに参加したときは「うちの店には関係ないと思った」と語る。
というのも、「能登寿司」は先代が1968(昭和43)年に開業し、2代目の中田店主は寿司職人歴43年。全国鮨技術委員会のメンバーだ。自分が握る寿司に絶対的な自信を持ち、仕込みの仕方が確立されている。それを変えることには抵抗があった。
「しかも“トレハ”って、横文字でしょ。寿司と横文字はなじまないよね」とトレハを使用することはなかった。それが、約4年前、親しい職人仲間から「トレハがスゴイ!」という話を聞く。そこで「そこまで言うなら」と試してみた。
「自分の味が変わるのがイヤだったから、最初は恐る、恐るでしたね。最初に試したのが甘エビ。甘エビの頭の部分は変色が早くて、仕入れ後、氷温保存しても、夕方にはミソの部分が黒くなる。それが、トレハを加え氷水に30分くらい浸け、氷温保存すると、黒くならない、透明感がある。これは、スゴイなと思いましたね」
次に、冷凍エビを解凍するとき、塩ではなく、トレハ対塩=2対8の「トレハ塩」を溶かした水に浸すと、身が透き通りキレイに仕上がる。
さらに赤貝で試してみる。赤貝に「トレハ塩」を振ってぬめりを取ると、塩だけのときよりもよく取れる。さらに赤貝の色合いが、時間が経過しても変わらない。
コハダやサバを塩締めするときに、「トレハ塩」で締めると、魚の水分が塩だけよりも早く出て、魚のうま味をより引き出してくれる。
ここまでトレハの効果を実感すると、いろいろ試してみたくなるのが職人気質。シャリの合わせ酢にトレハを加えると「閉店後でも、酢が飛ばず、むしろ酢とご飯がなじみ、自分の思い通りの酢加減のまま保存できている」と、風味の経時劣化を抑えるトレハの効果を実感。その後、合わせ酢に加えるトレハの配合を研究し、酢対トレハ=1600cc対大さじ6の中田店主オリジナルの黄金比にたどり着く。今は、この合わせ酢を2~3日分、まとめて作り冷蔵保存している。
ネタだけではなく、粉わさびでもトライした。「昔、先輩から『生わさびをおろすときは、おろし金に砂糖を少量馴染ませると、わさびの風味が出る』と教わったことがあるんですが、トレハは砂糖と同じ糖質でしょ。だから粉わさびにトレハを混ぜてみたら、時間がたっても辛味が飛ばず、雑身が少なく風味が良いような気がするんです。まだ実験中ですけどね」
中田店主は「一度使ったら、トレハの効果を必ず実感できる。でも使わなきゃ、分からない。その一歩が、勇気が要るんだよね。年季の入った職人は、自分の仕込みの仕方や味が完成しているけど、もっとよくしたいという向上心は職人ならみんな持っているはず。トレハなら、それができる。自分もトレハに出合ってから、いろいろ実験中ですね。若い職人なら、自由な発想で使いこなして、トレハの使い方の幅をもっと広げてくれるんじゃないかな」とトレハの可能性はまだまだ広がる。
●使用プロ:能登寿司・中田秀人店主
「能登寿司」 所在地=東京都国分寺市西町5-24-2/営業時間=午前11時~午後2時、5時~10時30分 火曜定休
●製品紹介:「トレハ」 食品素材における世紀の大開発を達成
トレハロースは、キノコ、酵母などに含まれる糖質。人工甘味料ではなく、砂糖と同じ天然に存在する糖質で、甘さは砂糖の約4割。林原が、トウモロコシなどのでんぷんに酵素を作用させて、トレハを大量生産することに成功し、商品化が実現した。その特徴は(1)でんぷんの老化抑制、タンパク質の変性抑制、脂質の経時劣化の抑制(2)食品の冷解凍時のダメージの抑制(3)食品の保水性の維持(4)食品の臭みを抑え、味を引き立てる(5)煮崩れの抑制など。“魔法の調味料”として、食品・飲食業界での普及がにわかに広まっている。
規格=20kg、2kg、500g
●(株)林原 本社所在地=岡山市北区
http://treha.jp
0120-05-8848