クローズアップ現在:ブルワリーパブ続々誕生 事業再構築補助金が後押し

2022.03.07 517号 07面
西武所沢店1階にあるビール工房業態の「ビール工房 所沢」。このブルワリーは百貨店の中でインパクトがある

西武所沢店1階にあるビール工房業態の「ビール工房 所沢」。このブルワリーは百貨店の中でインパクトがある

SAKE-YA JAPANの新業態「発酵ビストロ SAKE-YA」はブルワリーパブと酒販店のハイブリッド業態。写真は喜多見店(東京都狛江市)

SAKE-YA JAPANの新業態「発酵ビストロ SAKE-YA」はブルワリーパブと酒販店のハイブリッド業態。写真は喜多見店(東京都狛江市)

SAKE-YA JAPANの能村氏が創業した「高円寺麦酒工房」はJR高円寺駅北側の住宅地にある

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ライナの人気ビール「ねこぱんち」シリーズ。「強烈ではないが、しっかりとしたパンチがある」という意味

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 コロナ禍にあってブルワリー(ビール醸造施設)を併設した飲食店の開業事例が増えてきた。その要因は、クラフトビールの市場を支えているのが若い世代であり、ビジネスとしての持続性が期待できること。また、これまでブルワリー建設という大きな投資に踏み切れなかったところが、事業再構築補助金によって可能になったことが挙げられる。この分野の先駆者はこれらの新規開業者に向けてコンサルティングなどを行い、クラフトビール市場をバックアップしている。

 ブルワリーを併設した飲食店(=ブルワリーパブ)の草分けとしてライナ(本社/東京都台東区、代表/小川雅弘)が挙げられる。小川代表はクラフトビール好きが高じて2013年12月、東京・新宿御苑近くに、メーカー品のクラフトビールを樽で入れたクラフトビールレストラン「Vector Beer」をオープン。14年12月にはこの店舗の近くにIPA(クラフトビールのスタイルの一つ)専門の店を構え、さらにブルワリーをつくり「Vector Beer Factory」として営業を始めた。ここで生産していたクラフトビールは自社消費だけですぐに足らなくなり、17年12月、浅草橋にブルワリー「VECTOR BREWING」を開設した。

 現在、同社が展開する飲食店は16店だが、他の飲食店30店、酒販店やコンビニなど30店にも同社クラフトビールを卸している。供給量の比率は、コロナ前は自社7対他社3であったが、コロナ禍となり3対7となった。これは時短などで自社飲食店の営業が縮小したことと、これから生産体制を強化するために外販を強くしようと考えたからだ。

 ブルワリーパブ開業希望者が増えてきて、同社にコンサルティングを依頼する事例が増えているという。同社には醸造家育成やオリジナルビール開発の実績がある。また醸造施設メーカーと連携するようになり、これらによってコンサルティングの案件に速やかに応えていこうとしている。

 一方、SAKE-YA JAPANの事例。広告代理店で大手ビールメーカーのセールスプロモーションを担当していた能村夏丘氏は、ビール醸造家を目指すようになり10年10月、東京・高円寺にブルワリーパブの「高円寺麦酒工房」をオープンした。18坪33席の店だがにわかに繁盛し日曜日に30万円を売る店となった。そこで、ブルワリーパブを「街のビール屋さん」という存在感で、高円寺と同じ中央線沿線上の阿佐ヶ谷、中野、荻窪と展開していった。

 その動向を注目していたのが東京・中野に本拠を置く柴田屋酒店。「飲食業界を応援する」ことをモチベーションとしている業務用酒販店だ。同社では、ワイン、日本酒を扱うことに専門特化し、「次はビール」と考えて相談した相手が能村氏であった。そこで能村氏の事業は柴田屋酒店の傘下となり、「SAKE-YA JAPAN」へ商号変更。事業内容は、12~30坪ほどのビール工房業態の展開と「SAKE-YA」ブランドの店舗展開となった。この店舗はブルワリーパブと酒販店のハイブリッド業態で、酒販店で購入したワインや日本酒をブルワリーパブの中で飲むことができる。20年11月に西荻店(東京都杉並区)、21年4月に喜多見店(東京都狛江市)をオープンしている。

 さらに、ブルワリーパブ開業希望者がこの事業に専念できる環境を整える支援事業を展開。醸造免許取得、ブルワリーのレイアウトやつくり込み、原材料の供給、樽の洗浄や、開業に向けたセミナーも開催している。

 ブルワリーパブの先駆者が支援活動を行うようになったことで、ブルワリーパブ、クラフトビールは飲食業の中で今後、有望な存在となっていくだろう。

 (フードフォーラム代表 千葉哲幸)

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