外食の潮流を読む(111)かつて日本一の焼き鳥専門店が動き出した、変化対応の成長戦略とは
「やきとり大吉」(経営/ダイキチシステム、以下大吉)は1978年、兵庫県尼崎市に1号店がオープンし、1998年には1000店舗を突破した。ここの一番の特徴は、すべて「個人オーナーの加盟店」で構成されているということ。これは創業以来の「生業(なりわい)商売に徹する」という理念に基づいている。
この「大吉」では、2022年から次の成長に向けて動いている。まず、「新しい開業プラン」。個人オーナーが高齢化して閉店が相次ぎ、現在は500店舗となっている。それに歯止めをかける施策だ。
「大吉」では、これまで2つの開業プランが存在した。
1つは「リース方式」(低資金で開業)。本部の店舗を、加盟金をはじめ約150万円程度で借りて開業する(2年更新)。これに月々店舗家賃や店舗使用料、ロイヤルティーなどの本部への支払いがある。ただし、「本部の店舗」であるから、どのエリアで開業できるかわからないという条件が付く。
そのため、自己資金を貯めて、もう一つの開業プラン「オーナー方式」(本人の希望するエリアで開業)を目指すパターンが多い。店舗の装備を自分で整えて(初期費用約1800万円以上)、ロイヤルティーや改装積立金などを本部に、家賃は家主に直接支払う。このメリットは、本人が希望するエリアで開業できるということだ。
そして「新しい開業プラン」は「エリア指定リース方式」(リース方式とオーナー方式の中間)。リース方式で最初の2年間スキルを磨いた後に、希望するエリアで開業することができる。具体的には本部と要相談となる。本部への支払いは「リース方式」と同様で、エリア指定移行時に別途保証金330万円を納付することになる。この開業プランは、「親の面倒を見たい」といった人にとっては「リース方式」よりも便利な内容だ。
もう一つ「新しい客層を開拓するための新業態」にも取り組んでいる。同社では、通称「赤い大吉」のリブランディングが必要ではないかと考えて21年春に「全国1万人アンケート」を実施した。質問したことは、まず「ブランド認知」。全国、北海道・稚内から沖縄まで店舗が存在していることから認知は浸透していた。
次の「入ったことがありますか」の段階でスコアが下がった。その理由は「赤い大吉は、外から店の中が見えにくく、雰囲気がわかりづらいので入りにくい」という。
「では、外から店の中の様子がものすごくわかりやすい店をつくろう」となった。
そこで「白い大吉」が22年9月、神戸市内に1号店がオープン。現在、東京、神奈川、大阪、兵庫の4拠点、9店舗で動向を検証中だ。現状「赤い大吉」では女性客が2~3割だが、「白い大吉」では5割に。また、客層は「赤い大吉」が40代~に対し、「白い大吉」は20代~となっている。これからの新規出店は基本的に「白い大吉」で展開していくという。このように「大吉」では「変化対応」へ的確に動いている。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。