この1品が客を呼ぶ:「洋食亭ブラームス」花咲きオムライス

2001.09.03 235号 5面

「古きよき洋食屋の味を楽しんでもらおう」をコンセプトに、昭和58年のオープン以来着実に業績を伸ばし、今では9店舗を数えるほどになった人気店「洋食亭ブラームス」。中でも、特製のデミグラスソースを使った看板メニュー「花咲きオムライス」は、1日200食を売上げる店舗があるほどの人気ぶりだ。

東京を中心に、神奈川、千葉、埼玉と九店舗を展開する洋食亭ブラームスだが、ここルミネ荻窪店は昭和58年にオープンした一号店だ。

JR荻窪駅に隣接するショッピングビル、ルミネの五階。一五店舗もの飲食店が軒を連ねるレストラン街にあって、洋食亭ブラームスは開店以来、常に一、二の人気を誇っている。午前11時のオープンと同時に客が入りはじめ、正午を迎えるころにはすっかり満席になっているという毎日だ。

客の多くは買い物客とおぼしき女性だが、リピーターが多いせいだろう、ショーウインドーはおろか、メニューにさえ目を通さずにオーダーする人がほとんどだ。しかも、客の半数近くが五〇代以上の女性客で占められていることにも驚かされる。

そんな客の目当ては、看板メニューの「花咲きオムライス」(八八〇円)。香り豊かに炒めたチキンライスのほのかな赤と、ふんわりと焼き上げた地卵の鮮やかな黄色は、文字通り食卓に花が咲いたかのような美しさ。さらに特製のデミグラスソースを回し入れ、最後にグリンピースの緑が彩りを添えて完成だ。

「昔ながらの洋食屋の味を楽しんでいただこう、というのがこの店のコンセプトなんです。ですから、比較的ご年配のお客さまにも支持をいただいているというのは、何よりもうれしいことですね」

とは、洋食ひと筋二二年のベテランで、全九店舗の総料理長を務める正木孝二さん。正木さんの言う「昔ながらの味」とは、シンプルにして最高の素材を、手間ひまかけてじっくり仕上げた料理だという。

一番人気の花咲きオムライスの素材を見ると、神奈川県相模原市の契約鶏舎から仕入れた地鶏の卵、淡路島産の玉ネギ、そしてコメは福島・宮城・茨城の各県で収穫されたうち、最も状態の良いコシヒカリをその都度取り寄せる。

いずれも素材そのものの良しあしだけではなく、素材同士の相性やオムライスにしたときの完成度の高さを判断基準に、吟味に吟味を重ねて決定したという。

しかし、正木さんが定義する「昔ながらの味」の最たるものは、なんといっても正木さん自らが作り上げたデミグラスソースだ。通常、デミグラスソースといえばトマトペーストやケチャップ、赤ワインなどを使うのが一般的だが、ここでは一切使用しない。

牛骨と牛スジ、トマト、セロリ、ニンジン、玉ネギ、ニンニク、それにローリエやパセリの茎を加え、オーブンで焼く。それを大鍋に入れ、一日一〇時間じっくり煮込んでこす。それを水槽に入れてひと晩寝かせ、さらに翌日も一〇時間煮込む。この作業を一〇日間繰り返し、ようやく特製デミグラスソースが完成する。

「大げさでもなんでもなく、当店を支えてきたのはこのソースなんです」

洋食亭ブラームスの顔ともいえるデミグラスソースは、花咲きオムライスのみならず、さまざまなメニューに使用されている。花咲きオムライスと人気を二分する「煮込みハンバーグ」ほか「花咲きビーフオムライス」や「ハヤシライス」など、グランドメニューだけでも九種類のメニューで使われているのだ。

「極端にいえば、始めにソースありきというか、このソースに合う料理は何か、という発想でメニューを決めることもあるくらいですよ」

◆こだわりの食材 デミグラスソース

洋食亭ブラームスの人気メニューを見ると、ほとんどすべてにデミグラスソースが使われている。まさに洋食亭ブラームスの今日があるのはデミグラスソースのおかげといったところだが、それだけにわずかな失敗も許されないのだと正木さんは言う。

「使う素材がシンプルな分、ごまかしがきかないんですよ。その日の気温や湿度、また材料の状態を見極めながら微妙に調整しなければ、仕上がりに差が出てしまうんです」

濃厚でコクのあるソース、なるほどクセになる味わいだ。

◆記者席からのコメント

チキンライスと卵焼きとデミグラスソース。これらが三位一体となって立ち上るアツアツの湯気が、すでにおいしい。ふんわりと仕上げた色鮮やかな地卵はとろみが残っており、ソースやライスにほどよくなじむ。濃厚な色合いのデミグラスソースにはコクがあり、やがてのどの奥に広がる香りもまた楽しい。チキンライスは玉ネギの風味を十分に生かし、それ自体でもおいしくいただけるが、ソースをからめ、さらに卵焼きをからめると、いっそううまみが引き立つ。味の奥行きと深みを感じさせる、完成度の高い一品だ。

◆「洋食亭ブラームス」=東京都杉並区上荻一‐七‐一、ルミネ荻窪店五階、03・3393・2324/坪数席数=二八坪四〇席/営業時間=午前11時~午後10時/不定休(ルミネ荻窪店に準ずる)

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