シーフード調理学(8)エビ<4>おいしいエビほど多いグリシン
エビは甘みのあるうまみを持っていて、魚臭さがないので、日本人ばかりでなく世界各国の人々に好まれていることは前回触れたとおりです。
エビの種類は数限りなく、わが国では高級品として伊勢エビ、クルマエビ、芝エビがありますが、甘エビ(ホッコクアカエビ)なども高級品としては忘れてはなりません。栄養学的に申しますと、エビのエキス分がうまみを示すのは、その中に含むアミノ酸や非アミノ態の窒素成分によるものです。
「おいしい」といわれるエビでは、一〇〇g当たり四〇〇ミリグラムのエキス性窒素分を含んでいるといわれ、「まずい」ものでも二五〇ミリグラムを含んでいると分析されております。
「イカ」のところでも説明したように、甘みの成分はやはりグリシンです。
このグリシン含有の多い順にエビを並べると、おいしい順になり、また高価な順になる。
日本人の大好きなクルマエビは最もおいしく、大正エビはあまりおいしくない種類に属します。
これは、クルマエビのグリシン量が一〇〇g当たり一五〇ミリグラムであるのに対して、大正エビはその三分の一の約五〇ミリグラムしか含んでいないという分析によるものですが、何となく納得できる理由です。
活(い)きエビはおがくずに入っているので、水で洗い流した後、薄い塩水で洗うとよいでしょう。
伊勢エビとクルマエビのさばき方はイラストで紹介したとおりですが、背ワタは、細い竹串を背中に刺して引き出し、親指で串とワタを押さえてゆっくりと引くときれいに取れます。
またエビを揚げる場合の前処理ですが、まず頭をちぎり、尾と関節一節だけを残して殻をむいて、足も取ります。
次いで尾の先を斜めに切りそろえ、尾の上につきだした剣先も切り取り、水分をしごき出します。こうしませんと、水分により油がはねるわけです。そのあと、背ワタを取るわけですが、最後に腹に数ヵ所切れ目を入れます。
ゆでる場合ですが、エビが丸まらないように竹串を刺します。これはどんなエビも同じことです。
エビの生食用として人気のある甘エビ(ホッコクアカエビ)ですが、生食用はそれなりの理由があるのです。このエビはゆでると身肉が縮んでしまい小さくなってしまうことと、甘みが減ってしまうということにあります。
クルマエビがおいしいか甘エビがおいしいか、あなたの腕の見せどころです。
(『ニューデリカ通信』編集長 染矢清亜)