業務用市場で着実に普及する無洗米:月間1t使用で2万2360円の節減に
最近ブレークしている無洗米。コメを研ぐのが面倒な“手抜き主婦”にも、コメの研ぎ汁による水環境汚染を防止したい“環境オタク主婦”にも熱い支持を受けている。しかし家庭用で伸びたのはここ一年で、それまでは外食や中食産業など業務用で伸びてきた経緯がある。人件費や水道代の削減が図れるなどで、メリットが大きいためだ。
◆無洗米の製法は湿式と乾式に大別
「無洗米」とは、製造段階でぬかを除去し研がずにそのまま炊けるコメのことをいうが、その方法として、水を使う湿式と、水を使わない乾式に大別され、それぞれでさまざまな製法がある。
その中で約九割のシェアを占めているのが「BG無洗米」。「BG」のBは英語の「ブラン=ぬか」、Gは「グラインド=削る」で、ぬかの粘着性を利用してぬかを除去する方式だ。その他、水洗式の「ジフ」「スーパージフ」、さらに注目の製法として昨年発売された「ネオテイスティホワイトプロセス(NTWP)」がある。
急激な無洗米市場の拡大をにらんで、最近業界では無洗米製造設備の導入が進んでおり、現在、BGが四一ヵ所、昨年の9月21日現在でNTWPは二七ヵ所の精米・炊飯工場などで稼働している。
◆全国の生産量は27万t
全国無洗米協会の調べによると、平成12年度無洗米生産量は約二七万tで、前年比四四%増と高い伸びを示した。家庭用・業務用を含めて日本で消費されるコメは約六五〇万t程度とみられており、この中で無洗米の占める割合は約四・二%程度。しかし今年に入って大手や中堅スーパーを中心に販売に積極的な姿勢を示すところが増えており、今年度はさらに大きな伸長が見込まれている。近い将来構成比が一割を超えるとみられている。
◆無洗米のメリット
「無洗米は通常精米のコメより価格が高い」という声がある。確かに通常精米のコメよりも製造コストは高いが、製造卸の間では、これを販売価格に転嫁しないシステムづくりが進んでおり、すでに確立した卸も多い。
ただ一般的には、通常精米のコメと比較して1キログラム当たり10円程度の価格差があるとされている。にもかかわらず、価格の厳しい業務用で普及してきたのは、洗米機や汚水処理施設などの初期投資が不要なだけでなく、コメの歩留まりがよいことや、水道代などが大幅に削減できるうえ、作業効率が向上するなどのメリットが大きいからだ。
参考までに、無洗米を使用した場合の1ヵ月のコスト計算をしてみると、別表のようになる。
これは、BG無洗米の精米機製造メーカー・東洋精米機製作所が作ったコスト計算表を使って試算したものだが、1ヵ月のコメ使用量が1tの場合2万2360円の節減ができる。むろんこの中には、初期投資や人件費などは入っていない。
◆安全でおいしいコメ
無洗米に対して「普通精米と比較して食味が落ちるのでは」という先入観を持つ人もいるかもしれない。しかし無洗米とは、精米段階で、うまみ層を残して食味・品質劣化の原因になるぬか層をきれいに除去しているため、原料玄米が同じであっても通常精米のコメより食味が高い。
昔から「研ぎ名人が飯炊き名人」と言われているが、現代では無洗米の精米プラントが「飯炊き名人」を代行してくれるということになるだろう。炊飯後時間が経過しても、味や品質の劣化が少ないという点でも評価が高い。
また「本当に安全なコメ?」と不安を持つ人もいるかもしれない。安全性に関しては、精米機製造メーカー各社とも、実証データに基づき証明している。家庭用では生協がいち早く導入したコメだ。
各生協とも導入に当たって、厳しい基準で品質検査を行っている。便利で環境に優しいだけでなく、安全・安心なコメなのだ。