逆襲する焼き肉業 レインズインターナショナル、焼き肉はエンターテインメント
BSEをわれ関せずとフィールドを駆け抜けたのが「牛角」を手掛ける(株)レインズインターナショナルであろう。「牛角」の店舗数が五〇〇店舗を超え、店舗数では業界トップ企業であり、一昨年には株式公開も実現した。
同社はもともと昭和62年、不動産賃貸管理会社としてスタートし、平成8年に「牛角」の一号店出店を契機に外食事業に進出した。
炭火焼肉酒家牛角を柱として大きく拡大してきたが、ほかにしゃぶしゃぶの「温野菜」、釜飯と串焼きの「鳥でん」、熟成らーめんの「三悟麺悟」、ステーキの「49ERS HOUSE」などを展開する。
また、焼き肉も牛角だけでなく、SCテナント用の「さらん」「ごはん処牛角食堂」、二等立地展開の「炭の花」、クオリティー重視の炭火焼料理専門店の「灸り牛角」と多彩である。
BSE問題ではやや影響を受けたものの「普通に営業できた」とコメントをする。「人は火を見ると原点に返る」とし、「焼き肉であれば牛でなくても良い」として感動創造に力点を置いた。
牛角では、「焼き肉」ではなく「エンターテインメント」として、火を囲んだエンターテインメント重視、「商品・環境・接客」重視でこの一年に臨んだ。BSEに踊らされず、日ごろ店自体がどのようであったかを意識したのだ。その結果、BSE問題でファミリー層の来店が減ったものの、企業を揺るがすほどの大きな影響は受けなかった。
商品面では、二〇代女性社員が開発を行った、あぶったポンテケージョ(パン)をアイスクリームに付けて食べる「ポンテバニラ」(二七〇円)がヒット。「アッ冷たい」という奇妙な感覚が受けた。
環境面では、七輪を囲み「和みの空間」を演出することでカップル客の取り込みに成功、また、焼き肉店では稀とされた一人客でも気軽に入れる「ひとり焼き肉」、さらには初対面の人間同士でも七輪で肉を焼くという作業を共有することで、決してシラケさせることのない「牛角で合コン」という言葉も客の側から生み出された。
さまざまな要因はあるが、BSE問題を寄せ付けない安心感を客に与えたのは、接客面が大きいのではないか。
牛角では、食材の下ごしらえなどを徹底的にアウトソーシングし、積極的にパートナー(アルバイト)を活用した。それでも質の高い接客をできた理由は、パートナーミーティングの実施によるところが大きい。パートナーミーティングとは、パートナー一人ひとりが自ら課題を抽出し改善を考えるミーティングである。
そして、目標や行動などをゴール設計シートに落とし込み、店長室に掲載されるオープンボードで確認ができるようにする。進捗状況や店舗オペレーション状況などは店内設置のパソコンで閲覧可能であり、全店の業績までもがガラス張りになっている。
また、プロフィットツリーというシートも存在する。業績を改善するための作業をマニュアル化したものであり、「売上高=客数×客単価」という公式を基に作成してあり、「客数の改善には何をすればよいのか、客単価を改善するには何をすればよいのかなど」の原因別行動規定がまとめられている。
これらの仕組みでパートナーの行動指針が形作られ、定期的なパートナーミーティングで常に目標管理を行っているのである。
パートナー会食の実施やパートナーズフォーラム(年に二回、中野サンプラザで開催)で優秀なパートナーは表彰される。これらがパートナーのモチベーションアップにつながり、接客サービスに安心感を与えている。店長やFCオーナーと一丸となって頑張れる仕組みだ。
牛角では、適正価格で気軽に入れるというカジュアル性がヒットした要因とされている。客単価七〇〇〇~八〇〇〇円の働く男性が大半という焼き肉店イメージを、客単価二八〇〇円の若年層と女性客の多いおしゃれな店というイメージ変化。しかし、シッカリとした企業努力で安心感を与え、若年層を中心としたカップル客が多い店で、ファミリーで来店できるという強みがBSE問題を寄せ付けなかった大きな原因といえよう。