中食市場メニュートレンドを読む(3)惣菜編

2003.09.01 272号 4面

チェーンストアのデフレ競合を背景に、外食市場の拡大が鈍化している。一方、中食(テークアウト)市場は、少子高齢化、共働き世代の台頭、少量多種類の個食化などの世相を受けて着実に拡大。外食店の中食参入も活発化している。ユニークメニューが目白押しで好調な中食市場のヒットメニューを紹介する。今回は惣菜だ。

○ひと押し単品の訴求力で明暗が 安心の味守り地域性を出す

創作和食も飽和状態を見せはじめているが、しっかりとした味や素材にこだわったオーソドックスなおかずは、やはりどの店でも外せないアイテムとして定着化している。

そんな中、一品加えられたアイデア素材とともにひと工夫されたネーミングがその商品イメージとマッチングし、家庭ではなかなか出せない風合いや風味を醸し出したとき、その商品はヒット商品としての要素を帯びる。

素材へのこだわりやヘルシー感などはもう当たり前。本当にこだわりぬいたスター素材をどこまで光らせることができるかが、多品目の素材を使う惣菜においては重要なファクターである。

また、「この店のこの一品」という商品を作れる店と作れない店にも大きな差がついた。特徴のない店になかなかヘビーユーザーはつきにくいものである。

金を出して買うのだから、おいしくて当たり前。特にチェーン展開をしている店舗の場合、製作者側はいかにその商品が標準化されていて、どの店舗でも同じ味が出せるか、ブランドイメージを裏切らない安心の商品を出しつづけられるか、を追求していきたい。もっと高度な技としては、安心の味のベースを守りつつ、各店の地域性を微妙に反映させていくような展開が見せられたら素晴らしい。

惣菜業という小商圏型の業態は、いかに自店の利用率・占有率を高めていけるかが大きなキーとなっている。これから生き残っていく惣菜店には地域密着型しかありえない。そのあたりを理解し、地域に根づいた商品づくりに日夜励んでいく店しかこの先は残れないのではないだろうか。

◆なだ万厨房池袋西武店 白身魚の野菜あんかけ

衣をつけてカラッと揚げたカレイに細かく刻んだ椎茸、タケノコ、ニンジン、パプリカ、ナス、シシトウを甘酢あんでからめて仕上げてある。カレイの風味を引き立てよくなじむ。中高年を中心に、男性、主婦に人気の逸品。味は日本料理の料亭の老舗として名高いなだ万流で絶妙に配合された味のバランスには脱帽だ。和食の心である素材そのものの味を引き出す調理は、なだ万を始めとする専門店の職人の技とだし薄味によって完結する。本格的な日本料理を味わいたい時から、日々のおかずとしても不動の人気を誇る一品だ。

東京都豊島区南池袋一‐二八‐一、西武百貨店池袋店B1F

電話03・5952・5045

税抜き600円 284g(風袋込み)

◆美濃味匠鶴見フーガ店 土佐かつおコロッケ/釣りサバ梅煮物

サバは脂がのっていて、一緒に加えてある梅によって味がひきしまり、食べた後に脂っぽさが残らず、やわらかな味に仕上がっている。「土佐かつおコロッケ」は、一見普通のコロッケと同じに見えるが食べてみるとその違いが分かり、削り土佐かつおがたっぷりと中の具材として使用されていることに気がつく。甘めの味に仕上げてあるので、魚が苦手な人でも食べやすく、子供のおやつとしても最適で、カルシウムもたっぷり取られているので、体にやさしい健康的なおやつとして利用してみてはどうだろうか。こういった家庭でもまねしたくなる商品に仕上げていることが主婦に愛されているゆえんだ。

横浜市鶴見区富岡町二‐一、ツルミフーガ1

電話045・573・6137

土佐かつおコロッケ 税抜き130円 86g(風袋込み)

釣りサバ梅煮物 税抜き230円 108g(風袋込み)

◆融合銀座三越店 イタリアン生春巻きボロネーゼ風/ねぎとろズッキーニの生春巻き

昨今、生春巻きは多くの店で採用されているメニューであるが、その中でも特に具材新鮮度の面で女性に人気が高く話題の一品になっている。色とりどりの食材が生春巻きの皮から透けて見えて視覚的にも美しい。醤油とオリーブオイルのシンプルなソースをかけていただくものであるが、具材のおいしさとよくマッチしていてさっぱりといくつでも食べられそうだ。「イタリアン生春巻きボロネーゼ風」はエビとクルミを混ぜたボロネーゼソースと大根、セロリ、トマトが巻かれていて、濃厚なチーズソースにつけて食べる商品だ。カリッとした食感が病みつきになる。パーティーフードとしても話題をさらいそうなヘルシーなメニューである。

東京都中央区銀座四‐六‐一六、三越百貨店銀座店B2F

電話03・3562・1111

イタリアン生春巻きボロネーゼ風 税抜き300円 72g(風袋込み)

ねぎとろズッキーニの生春巻き 税抜き320円 60g(風袋込み)

◆生活創庫 UNYイースト21店 米なす田楽

1/2にカットした米ナスに甘く仕立てた味噌だれ、白ごまに白髪ネギをのせた米ナスになっている。見た目が大きくインパクトがあり、目を引く一品だ。陶器調の容器に緑のリーフレタスが艶のあるナスの深紫色を際立たせた秋の恵みたっぷりの商品である。世の父親の酒のつまみとして利用されることも多く、またもう1パック購入し、家族でつっつくケースも少なくない。甘い味付けのため子供にも喜ばれる。この商品ならば野菜嫌いな人にも田楽としての味を楽しんでもらえるため好評。豊かな味覚の秋ナス。それに柔らかい甘味噌の味も助けて、家庭ではなかなか出しにくい味と雰囲気を醸し出している。

東京都江東区東陽六‐三‐一

電話03・5632・6111

税抜き380円 406g(風袋込み)

◆旬菜楽市本郷三丁目店 十菜豆

大豆、トラ豆、大福豆、ウズラ豆、黒豆、エンドウ豆、椎茸、ニンジン、昆布、桜エビの6種の豆と、4種の食材を使って炊きあげたのが「10菜豆」である。ご飯によく合う味つけで、健康志向の強い現代、一度に10品目の食材が取れるということで、副菜としてとても人気が高い。1日30品目摂取が、健康生活の指針といわれているが、食卓に欠かせない副菜として「十菜豆」、それに具だくさんの味噌汁で、かなり30品目に近付くことができる。バランスに気をつけている人、中高年齢層の人がよく購入しているが、最近では若い女性の需要が増え、昼時などは、100g程度購入していく姿が目立っている。

東京都文京区本郷二‐四‐一四

電話03・3814・9457

税抜き190円/100g 180g(風袋込み)

◆三日坊主 新銀だらの西京焼き三菜セット

この商品は新銀ダラが、程よい焼き具合で盛り付けられ、カボチャのそぼろあんかけと厚焼き卵それにニンジン、白滝、油揚げのあえ物が組み合わされ和を基調に彩もよいセットとして販売されている。

メーンの銀ダラ以外の惣菜だけでも十分におかずとして手づくり感がありうれしいメニュー構成になっている。

1人前のセット販売商品として単身者をはじめとし、2人暮らしの老人家庭などに受けている。

魚メーン、野菜が副菜という非常に栄養バランスも良いヘルシーな和惣菜としても人気のおかずセットとなっている。

東京都豊島区南池袋一‐二八‐一、西武百貨店池袋店B1F

電話03・3981・0111

税抜き880円 226g(風袋込み)

◆くいしん坊万才!戸越銀座店 ビーフシチュー

しっかり煮込まれた高級牛肉が濃厚でとても柔らかい味を出している。

具材となるニンジン、ブロッコリー、小玉ネギはすべて大きくカットされており、それでいてこれもまた柔らかく、この内容が惣菜店で購入できるとは驚きの商品である。

専門店、レストランで出てくるビーフシチューにも全くひけを取らない味で、深い満足感を得ることができる。

販売方法にも工夫がなされており、野菜であるニンジンのグラッセ、ブロッコリー、小玉ネギは後から自分でトッピングするのだが、この方法をとることにより、彩り豊かなままの新鮮な温野菜を持ち帰ることができる。

家庭で作るビーフシチューとは違った本格派ビーフシチューの味を手軽に家で堪能させてくれる。

東京都品川区平塚一‐八‐四

電話03・3788・5008

税抜き300円/100g 240g(風袋込み)

◆スーパーマーケット中村屋平井店 手むき里芋と野菜の煮付

ゴボウ、ニンジン、椎茸、コンニャク、里芋、鶏肉の一品一品を大きめのカットにしてあり、見た目同様、かなりのボリューム感で圧倒される商品だ。この手づくり感は見ているだけで穏やかな温かみさえ感じられる。

実際にこの店で販売されている野菜などを使って調理しているため、いつでも旬の食材を味わうことができ、シーズンごとに楽しませてもらえる。

これだけ手が込んでいて消費者にうれしい価格設定となっているので、主婦の根強い人気を博している。

また、味の豊かさだけでなく「手むき里芋」というネーミングにも昔ながらの風情があり、お年寄りや、中高年にも愛されている。

東京都江戸川区平井三‐二二‐一六

電話03・3681・1742

税抜き328円 246g(風袋込み)

◆美濃吉池袋東武店 ぶりと大根

面取りが施された大根の輪切りの上に、大きなブリの切り身がドンと乗っている様子は斬新で、目を引く。

しかし驚かされるのは、盛り付けばかりではなくその味だ。脂ののったブリは上品に煮込まれ、上にのったユズの香りが、また食欲をそそる。身は軟らかく、ふっくらと炊き上がった大根との相性は抜群で、まさにとろけるおいしさだ。

あめ色の大根とブリ、それを引き立てるユズ、椎茸、ミブナの組み合わせは、計算された職人技なのだ。家庭の味を料亭の味に仕上げた自信がこの盛り付けに表れているといえる。上品な壮年期の主婦がまとめ買いをしていく。

東京都豊島区西池袋一‐一‐二五、東武百貨店池袋店B2F

電話03・3985・8421

税抜き500円 126g(風袋込み)

◆富惣渋谷東急東横店 チャーシューの煮物

「角煮ではないか」と思わせるほどの厚さと大きさの「チャーシューの煮物」は見た目のインパクトばかりではなく、味も驚くほどしっかりつけられた商品である。豚肉の脂身と赤身が渦巻き状に綺麗に巻かれてあり、食欲をそそる。

ベースは醤油味でさっぱりとしているが、口に含んだ瞬間、とろける肉の軟らかさとマッチして、何ともいえない濃厚な味わいを作り出している。

付け合わせのゴボウとニンジンも、肉のうまみをさらに引き出し、家庭で料亭の味を楽しめる一品に仕上がっている。それ故、中高年の女性を中心に根強い人気のメニューだ。

東京都渋谷区渋谷二‐二四‐一、東急百貨店東横店B1F

電話03・3477・4616

税抜き965円 312g(風袋込み)

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