関西版:醤油だれ・熟練の技・本場の味 食道園・江崎政雄社長に聞く

2003.12.01 278号 9面

(株)食道園(大阪市中央区、電話06・6212・1751)は、創業以来守り続ける味・品質、卓越した技術、本物を追求する中での積極的な仕掛けにより、顧客から絶対的な支持を受けている。既存店売上高が前年同期比六%増と業界水準を大きく上回る同社には、焼き肉業界ならずとも学ぶべきところが多い。江崎政雄社長に取り組みをおうかがいした。

肉を引き立て、食道園の味を支えるのは「おやじの代に選んだ」(江崎社長)という「マルキン醤油」(本社=香川県小豆島)をベースとした醤油だれ。「肉があっさり食べられるように、さっぱりした味にしている」(同)。創業当時から変わらず、味は一定に保っているというたれは、砂糖、ニンニク、柑橘類、唐辛子、唐辛子味噌、ごま、ショウガ、ネギをブレンドし調味している。

たれは「つけだれ」と「もみだれ」の二種類で、「つけだれ」は徳島産のスダチをふんだんに使用した柑橘風味、「もみだれ」は醤油と砂糖ベースのあっさりタイプ。「たれがおいしいと評判を得てきたので、これまで(変えずに)続けてきた」(同)という、自慢の醤油ベースたれである。

また、食道園の独特の味づくりの要素が同社独自の「元味噌」と呼ぶオリジナル味噌。粉唐辛子や米粉、大豆糀や塩を入れ炊いて発酵させたもの。毎年、冬のこの時期に大きなカメに三杯に仕込み、一~一年半かけて熟成させている。

「(焼き肉業態は)基本的に提供するものは、カルピ系、ロース系、ホルモン系の三系統に決まっている。また無煙ロースターの普及で、薄切が主流となってきた」(同)という中で、選りすぐりの和牛上骨付カルピブロックに、裏表に深く包丁を入れ無数の網目模様にしたのが「華網カルピ」。昨年に始めたこの料理は、全国焼肉協会での表彰、TV各社に紹介されるなど大変な評判となり、今や食道園の名物料理となっている。

開発された経緯は、同社の清水哲雄総料理長が和牛のおいしさを十余年追い求め続け、ようやく到達したもの。「網目の切り口に短時間で火がとおり、ほどよく脂質をあぶり出す。ジューシーさが損なわれず、たれが絡みやすい。カルピのうまみをとことん味わえる絶品」「華網に使用する肉は、骨付の前バラのごく一部の部位しか使用できないため材料集めが大変」(同)と評判となりうれしい半面、苦労も語る。

「華網カルピ」は全店で提供しており、価格は単品で大(二八〇g)三八〇〇円、小(一四〇g)二〇〇〇円。「華網カルピコース」(和牛華カルピ・和牛上ロース・和牛上ハラミ・前菜三品・チヂミ焼・ユケ・上ミノ湯引き・つつみ野菜・華ご飯・デザート・韓国茶)が五五〇〇円で好評である。

同社では本場韓国の味体験企画と題し「匠の技と味」フェアを季節ごとに開催し、約七割以上というリピーターを満足させている。

春季の「通の肉フェア」(3月20日~5月31日)では、稀少中の稀少部位「ヒウチ」一人前・二五〇〇円、「みすじ」同三〇〇〇円、「いちぼ」同二五〇〇円。「春野菜フェア」(同期間)では「春野菜ピビンパ(スープ付)」六五〇円、「春野菜全州(チョンジュ)ピビンパ(同)」九五〇円、「春野菜ナムル」四〇〇円を提供した。

夏季の「こだわりの冷麺フェア」(6月1日~8月31日)では、「オリジナル冷麺」八〇〇円、「オリジナルピビン麺」八〇〇円など七アイテムを提供。さらに秋季の「チヂミフェア」(9月20日~11月16日)では、本場ソウル・鐘路で五〇年の歴史があるチヂミの匠、禹済銀(ウジェウン)氏を招き、店頭や店内実演、料理教室までも行っている。

江崎社長は徹底的なこだわりについて、「本物志向の顧客への来店道義づけと、調理師の技術の向上につながる」と述べる。

◆食道園(ヤクー)/企業名=(株)食道園/本社=大阪市中央区宗右衛門町五‐一三、電話06・6212・1751/店舗数=一五店舗(うちヤクー二店舗)/客単価=三〇〇〇~五〇〇〇円(ヤクー二二〇〇円)/平均月商二〇〇〇万円

◆江崎政雄社長

江崎社長は全国焼肉協会(JY)の前会長で、業界の発展に大きな貢献をされてきた。また、外的要因により厳しい環境の時でも、本質を貫き通し、積極的さを失わないその経営姿勢は、焼肉業界のみならず、外食業界全体の模範となっている。

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