この一品が客を呼ぶ・大阪:船場カリー本店「すじネギカリー」
大阪の本町は、今も昔も商売の中心地。多くのサラリーマンやOLが行き交うこの街は、カレー店の激戦区でもある。なかでも、行列ができる店として知られるのが「船場カリー」本店だ。二二席のみだが回転が早く、待ち時間は短い。それでもピーク時には、二階の店舗へと続く階段には客がズラリと並ぶことに。その客足は、ランチタイム終了まで絶えることがない。
平成9年にオープンしたこの店は、大阪のカレーフリークなら一度はチェックする有名店。今では、FCとして「船場カリー」を売る店が六店舗あるが、ルーツはこの本店である。
ここのカレーを見てまず驚くのが、ルーの色。ルーにはイカ墨が入っているため、通常のカレーでは出ない、黒い色合いに仕上がるのだ。味は辛めで、重量感のあるルーがたっぷりかかった姿は、まさに“男のカレー”という雰囲気。
しかし、「激辛(プラス二〇〇円)を頼む女性も多いですよ。女性の方が辛さに強いのかも」と福山文明店主。来店客の八割は男性ながら、カレー好きの女性も引きつける味といえる。
人気の「すじネギカリー」は、赤身のスジ肉からスジを削り取った、軟らかい部分を使用。ネギと一緒に四五分~一時間ほど煮込み、一晩寝かせてからベースのルーと合わせて、砂糖や醤油、ガーリック、ブラックペッパーなどで味を調える。
ルーの上にたっぷりのってくるのは、みじん切りの白ネギ。適度な肉の歯ごたえとネギのシャキシャキ感を楽しめる、ユニークなメニューだ。
創業以来、牛肉はオーストラリア産のもも肉とバラ肉をブレンドして使用。また三年ほど前から、冬は甘く夏は辛くと、気候により辛さも調節しているとか。
カレー店の場合、冬場は客足が鈍るものだが、今では季節による波がなくなったという。武骨さとともに、繊細さも併せ持つカレーといえそうだ。
◆食材の決め手 讃陽食品工業(株)「いかすみソース」
カレールーにイカ墨を取り入れるようになったのは、五年ほど前から。「自分の好みは辛いカレー。でも、味を辛くしても、色が黄色ではインパクトがない。そこで、色を黒くしたいと考えたのがきっかけ」と、福山さん。このソースは、一般的にはパスタ料理に使われるもの。イカ墨に、玉ネギ、トマト、ワイン、ブランデー、アーモンドなどを加えた、調理済み製品だ。ルーにイカ墨のうまみが加わることで、色合いとともに味も立体的になった。
▽問い合わせ=讃陽食品工業(株)(香川県高松市、電話087・833・7011)
◆船場カリー本店(大阪市中央区南本町三‐三‐一〇、杉山ビル二階、電話06・6253・1760)営業時間=午前11時~午後2時、6時~9時/席数=二二席/一日食数=一五〇食