常に売り切れ“幻のドーナツ” ビッグイーツ「ドーナッツプラント」

2004.07.05 287号 16面

今、東京では、行列に並んでもなかなか手に入らない幻のドーナツが話題だ。5月に白金台と大手町に開店した「ドーナッツプラント」は、無添加、無漂白の小麦粉を使用し、オーガニックシュガーでコーティングした大きなドーナツを販売する。バニラやチョコの定番品、シソ、黒ごま、ローズウォーターなどバラエティーに富んだシーズンドーナツが話題を呼んでいる。

店舗を運営するのはビッグイーツ(株)(東京都港区、電話03・5793・3895)。代表取締役社長の後藤順氏は四年前、ニューヨークでこのドーナツに出合い、その味に感激。三年がかりで創業者を説得し、日本とアジア九ヵ国の販売ライセンスを得た。本家のドーナッツプラントは九四年、マーク・イズラエル氏がニューヨーク、マンハッタンのロワーイーストに創業した。店舗は一店だけだが、マンハッタンの高級デリショップ「ディーン&デルーカ」などに毎日約三〇〇〇個のドーナツを販売する。

祖父譲りのレシピを基に作るベーカリードーナツは、小麦粉、砂糖など使用する材料はすべて「無農薬」「無添加」の自然素材のみ。スティーブン・スピルバーグなど多くの著名人も同ショップのファンだという。

マーク氏のもとには世界中からライセンス販売を求めるオファーが殺到している。しかし、このドーナッツプラントの味を再現するには厳密なクオリティーコントロールが必要だ。レシピを開示し、ライセンスを供与する「のれん分け」には、何よりもこのクオリティーの価値を理解し、維持できる人物かどうかが判断基準になる。ニューヨークを訪問するたびにドーナッツプラントを訪ねた後藤氏の熱意が、マーク氏の信頼を勝ちとり、今回の日本出店に結びついた。

ベーカリードーナツは、従来型のスナックドーナツと違い、パンのような味わい。食べてみると油で揚げた部分は表面だけで、中はふんわりと軟らかい。単価二八〇~三〇〇円と、ドーナツとしては高い価格だが、あっという間に完売してしまうのは、顧客が価格に見合う価値を認めるからだ。開店して間がないのにリピーターが多いのも、それを裏付ける。

現代は老若問わず「健康」に気を使う時代だ。翌日の体調にひびくような「深酒」は姿を消した。後藤氏は「夜酒」ならぬ「夜お茶」が、ひそかなブームになっていると語る。ダイエットを考えると、夜、食事を取ることは禁物だが、油っけのないベーカリードーナツなら、ボリューム感もほどほどで、体重を気にする女性も抵抗なく受け入れる。

甘いお菓子だったこれまでのドーナツに代わり、ドーナッツプラントのベーカリードーナツは新しい市場を生み出すかもしれない。後藤氏は、そのためにはきめ細かいマーケティングに応じた生産体制が必要と語る。例えば小規模なセントラルキッチンで近在の数店舗にデリバリーする。小回りが利くため、季節や地域特性に合わせ、メニューに特色を出すことが可能だ。惣菜タイプのドーナツも開発を進めている。「まだ計画段階ですよ」と後藤氏は笑う。まずは、常に売り切れで、どこにも商品がない現状を克服してからだ。

◆店舗概要

ドーナッツプラント大手町ビル店=東京都千代田区大手町一‐六‐一、大手町ビル地下二階、電話03・5252・7511

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら