電化厨房特集:和食ファミリーレストラン電化厨房最前線=坂東太郎「ばんどう太郎 友部店」
北関東の外食市場をリードする和風FR「ばんどう太郎」は、創業30年を節目に“電化厨房改革”に乗り出した。昨年暮れに開業した友部店で、はじめてオール電化厨房を導入。今後、新店はもとより、既存店でもオール電化厨房への転換を推進し、「労働環境の改善」と「現場の気力充実」に注力する方針だ。
ばんどう太郎は、そば・うどんを主力とする高級志向の和食ファミリーレストラン。高品質な料理に見合う接客サービスの充実ぶりが、繁盛の原動力だ。「調理力と接客力の向上には、気力を充実させる“ゆとり”が必要」という青谷洋治社長は、その環境づくりのため、本格的な電化厨房の採用に踏み切った。
「創業30年を機に『本日開店』をスローガンに掲げ、店舗運営の再構築に着手。さらなるレベルアップの実現には、厨房改革による働きやすい環境づくりが不可欠と判断しました」と青谷社長。「環境改善で得た余力を人材育成の強化に生かす。現場の“やる気”こそ当社の命」と言い切る。
オール電化厨房の1号店となった友部店では、すでに多くの電化メリットを享受している。まずは、電気式ゆで麺釜の採用による「排熱の抑制」だ。ゆで麺釜は、厨房の要として常に沸騰を強いられるため、排熱の多いガス式だと、夏場には厨房室温が50度Cにも達する。だが発熱の少ない電気式だと、年間通じて快適な室温を保てる。労働環境の改善はもとより、空調(冷房)コストの削減効果も見込めるという。
そして、何より効果を発揮したのが「清掃の簡略化」だ。排熱抑制で油煙が飛ばず、機器の焦げ付きもないため、閉店業務の清掃時間は、従来の1時間(ガス厨房)から30分に半減したという。
「閉店業務の清掃は3~4人で行いますが、これを全店(57店)で毎日30分短縮できたら、コスト削減効果は膨大」と青谷社長。「人件費の削減が目的ではありません。その余力を営業力の強化に生かし、得た利益を従業員に配分できれば、さらに現場の“やる気”が増すはず。それを実現するための電化厨房改革なのです」と意気込む。
閉店業務の30分短縮にめどが立った友部店では、さらなる電化メリットを追求し、開店業務の30分短縮に挑戦している。合わせて1時間の短縮を目標とし、従業員の気力の集中化と、密度の濃い店舗運営を目指す考えだ。
また、先立つ電化厨房の初期投資は、ガス厨房の約2倍だが、ランニングコストの削減効果を割り引くと、投資回収は約3年(人件費削減は含まず)とのこと。「ガス料金が上がってきているので、もっと早いのでは」(青谷社長)とにらんでいる。
◆企業メモ
(株)坂東太郎(本部=茨城県古河市高野540-3)事業内容=和風FR「ばんどう太郎」33店舗のほか、豚カツFR「かつ太郎」など計57店舗を手掛ける。
◆店舗メモ
「ばんどう太郎 友部店」(茨城県笠間市旭町412-1)坪数・席数=100坪・120席/営業時間=午前11時~午後10時/平均月商=1500万円/客単価=1250円
◆現場のコメント:ばんどう太郎 友部店店長・新井隆弘さん
当初は大丈夫かな? と心配でしたが、意外にすぐに慣れました。というよりも、最近はメリットが多いことに感心しきりです。とくに助かっているのは、調理時の加熱を数値管理できる電磁調理器ですね。
当店は鍋物などの煮込み料理が多く、調理には熟練と見張りが必要でした。しかし、IH調理器を活用すれば、調理時間や加熱量をオートメーション化できます。手間が浮いた分、鮮度優先の仕込みや、細かな盛り付けが可能となります。何より、ホールスタッフとの連携に気を配れる余裕が生まれます。これが大きいですね。
◆使用機器紹介:ニチワ電機(株)「電気そばかまど(ENB-600R)」
立ち上がりが早く、強い対流を釜の片側に起こす、ハイパワーの加熱設計を採用。麺が素早くほぐれ、ゆで上がりも早いため、麺のコシが損なわれない。
操作は火力調節用のカムスイッチ3段切り替えだけでOK。水使用に対応した防水構造と安全設計。漏電遮断機、過昇防止装置付き。(消費電力=8.4kW)