アポなし!新業態チェック(30)「ロイヤル・ガーデン・カフェ」
昨年12月8日、東京・青山の明治神宮外苑の入口、イチョウ並木に沿った一角にファミリーレストラン(FR)大手ロイヤルグループの新業態「ロイヤル・ガーデン・カフェ」がオープンした。
この店は、「永続的(Sustainable)な街のコミュニティ基盤」となる店舗の実現を目指す、というコンセプトの下に、「契約農家による有機食材などを使用した素材の顔が見える『ヴィジブルフード』」「中古資材やバイオマス資材などを利用して環境負荷の少ない店づくりを行い、店舗で発生する生ゴミは肥料として循環させる『リサイクルスタイル』」「ケータリングやビジネスのサポートを通じて、地域の人々の活動と、より密接に関わっていく『ローカルコミュニティ』」という3つのテーマに取り組んでいくことをうたっている。
店舗は1階のカフェとベーカリー、2階のレストランから構成され、メニューのうちのいくつかには、「O」や「V」といった記号が記されている。「O」は「オーガニック」、「V」は「ヴィーガン」の略で、それぞれ「有機野菜のみで作られた料理」と「肉、魚、卵、乳製品などの動物性食材を使用していない料理」という意味のベジタリアン用語だ。
経営は、シェーキーズなどを展開するロイヤルグループのアールアンドケーフードサービスが行っており、同じ外苑の東通りに出店する「Cafe Shakey’s」を手がけたプロデュースチームにより開発された、外食チェーンとしては新しいスタイルを打ち出した大型店舗となっている。
★けんじの評価
昨年からの景気後退の影響を受けて、ここ半年ほど外食チェーンの新業態出店のニュースを見かけることはほとんどなかった。そんな中でも、夏の「Cafe Shakey’s」に続いて大型の新業態をオープンさせたのがロイヤルグループである。以前は中国料理店の老舗として有名だった物件への出店だが、ウッドデッキを広げたナチュラルなデザインは優雅な散策路の景色に溶け込んで、まだ肌寒い3月の午後にも店内だけではなくテラスでくつろぐ人々が数多く見受けられた。
しかし、この店舗の完成度や業績的な成否はともかく、FRチェーンを母胎とする同社が、なぜ東京・青山という立地でこうした先端的な大型店を出店したのか、その意図はあまりよく理解できない。
環境問題から生まれた「サステイナブル」というコンセプトも決して目新しいものではないし、そもそもFRチェーンがそうしたコンセプトを打ち出すのであれば、まずは郊外の住居地域からスタートするのが本来のスタンスではないのだろうか。来店する客層は、国内でも恐らくかなり限定された(要するに比較的セレブな)人々であり、この店の運営が本体のFRチェーンにどのようなフィードバックを与えるのかは不明だ。
これまでも外食チェーンにおいて、外部チームの企画による客単価ゾーンの大きく離れたアップグレード業態の出店が、結局チェーン本体の経営との整合性を生まないまま尻すぼみに終わった例は多数存在する。低価格が求められる時代背景の中で、今後同社がどのような展開を見せるのか業界の注目度は高い。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
◆店舗概要
店名=「ロイヤル・ガーデン・カフェ」/開業2008年12月8日/所在地=東京都港区北青山2-1-19/席数=175席(1~2階)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。