ピカイチキッチン(102)ニュージーランドのフードサービス事情〈1〉

2010.04.05 370号 16面

 ○南半球の農業国に見る日本と中国の活力差

 ●ニュージーランド初訪問

 親友からニュージーランドに来ないかと誘いを受けていた。親友いわく、「日本の元気のなさが実感できる」とのこと。最初はあまり興味がなかったが、休暇もとれたので、とりあえず旅行してみることにした。

 ニュージーランド訪問は初めてである。おいしいワインとT-BONEステーキをほおばりたかった、というのが旅行の目的の一つであった。

 成田を出発して約11時間、ヨーロッパに行くのとあまり変わらない。空港に到着すると、空気がとても澄んでいることが実感できる。さすが、自然を大切にする環境王国である。

 時差が小さいので、早速内陸を目指してレンタカーで移動する。行けども広大な牧場が続く光景で、われわれを迎えてくれたのは、羊と牛ばかりである。「Windowsの待ち受け画面」のような景色が永遠に続く気がする。ニュージーランドは、国の面積が日本の約72%なのに対して、人口は約33%余りしかない。人口密度は1平方kmあたりわずか16人と極めて少ない。

 ●豊かな農業国と中国の影

 そんなニュージーランドではあるが、世界的な不況の影響を他の国と同様に大きく受けている。やむなく農場を手放す畜産農家も目立つようになっている。

 幸い酪農分野は好調で転業農家も増えている。中国の「メラミン入り粉ミルク」事件は記憶に新しいが、その原料ミルクの生産はニュージーランド企業で、オークランド郊外の牧場に囲まれたところにある。誤解のないように説明すると、メラミンを混入したのは、この企業ではない。

 このようにNZは農産物の輸出大国であるが、中国では、食料確保を国策として、ニュージーランドの農業に目を付けて、廃業農家を牧場ごと買い付けている例もある。かつて日本企業も同様な農場買い付けを行った時期もあったようであるが、今は日本企業にその力はない。つまり、先行投資に対する余力が無い。その点13億人を超える人口を抱える中国は、国の将来政策の一つとしてあらゆる手段で食料確保をしている。日本のような金銭的解決では限界が来るであろう。

 ●さすがは中国、頑張れ日本

 話は変わるが、ニュージーランドでは、日本の携帯電話は使えないか、もしくはその料金が大変高い。中継局がないためである。したがって、日本の携帯電話の競争力は当然著しく低い。ここでも中国は、国の施策で、中継局を整備しつつある。さらに、テレビも同様である。NHKは見ることができるが、限られた条件を満たす場合だけである。しかし、中国はマスメディア分野でもインフラ整備が進んでいる。まさに、国の元気のなさと、国が目指す方向が理解されない典型ではないだろうか。

 さすがは中国、頑張れ日本、と言いたくなるのは私だけではない。少なくとも、オークランドに住む日本人の多くはそのように感じている。

 ((有)本山フードビジネス研究所 代表取締役 本山忠広)

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