近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:紅蘭亭「太平燕(タイピーエン)」
健康志向を追い風に即席春雨スープが依然人気だが、その元祖といえば熊本名物の「太平燕(タイピーエン)」だろう。太平燕は明治後期、中国福建省から長崎に渡った華僑の料理として生まれ、熊本の女性の厚い支持により、ご当地料理に育まれた。熊本ではいまや学校給食に出るほど大衆化している。
その太平燕文化のシンボルとして名高いのが創業1934年の中国料理店「紅蘭亭」だ。がらスープの風味を生かすシンプルな塩味、味の変化を演出する虎皮蛋(フーヒータン=揚げ卵)など、太平燕の魅力と基本レシピを定義づけ、県内に定着させた。
熊本で愛され続ける紅蘭亭の太平燕を紹介する。
◆営業の概況:有名になる前は圧倒的に女性客
「紅蘭亭」の立地は熊本城下の繁華街・下通アーケード内。昼時は近隣の会社員客、昼過ぎはショッピング後の主婦客でにぎわい、休日は太平燕目当ての観光客が多く訪れる。1番人気はやはり太平燕。単品のほかセットメニュー、宴会料理でも活躍し、日販は平日約100食、休日は約200食、来店客の2人に1人は注文し、客層も幅広い。
葉山耕司専務取締役は「いまや老若男女を問わず人気ですが、有名になる前は圧倒的に女性客が多かった。いわば太平燕は熊本の女性に育てられた料理なのです」という。
◆特徴と調理:コクが加わる味の変化に醍醐味
太平燕の作り方は別掲の通り。
がらスープは鶏がら2に対し豚骨1。調味の決め手は、まろみとコクのバランスがよい露天干しの福建天然塩。この2つが飽きのこない“ホッ”とする味わいを奏でるという。
また、虎皮蛋も味作りの要だ。
浜崎隆市料理長は、「虎皮蛋は、ゆで卵を200度Cの白絞油で30秒、素揚げしたもの。太平燕を食べるにつれ、黄身と皮に染み込んだ油がスープに溶け出し、あっさりした味から次第にコクが加わります」と語り、「このスープの味の変化を楽しむのが太平燕の醍醐味です」と説く。
また、太平麺を守ってきた紅蘭亭には“太平麺かくあるべし”たる次の定義がある。
(1)春雨は100%緑豆であるべし(2)虎皮蛋は必ず入れるべし(3)おもな野菜はキャベツとすべし(白菜は水気が多いのでそぐわない)(4)がらスープは鶏がらと豚骨の共出しであるべし(5)露天干しの福建天然塩だけで調味すべし。
◆発祥と展開:九州制覇もラーメン登場で消滅 熊本だけ生き残り
明治後期、福建省から長崎に渡った華僑らが身近な材料で「ちゃんぽん」や「皿うどん」などを作ったが、太平燕もその一つと推測されている。そもそも福建省の太平燕は、祝い事に食べられるハレの料理。それをまねて春雨で作り、宴会料理で出されたのが日本の太平燕の始まりだ。
その華僑らが九州各地に渡り、熊本に渡った葉菊華氏は1934年に紅蘭亭を開業。当時、太平燕は九州各地で広く食べられたが、ラーメンが主流になるにつれ消滅し、女性客から大人気を得た熊本だけ生き残ったという。
◆店舗情報
「紅蘭亭」 所在地=熊本県熊本市安政町5-16/経営=(株)紅蘭亭/営業時間=午前11時半(土・日・祝11時)~午後9時半、無休/下通本店のほか2店舗
◆紅蘭亭の「太平燕」(750円)レシピ
(1)豚肉、エビ、イカを炒め、日本酒を加えて臭みを除く。
(2)タケノコ、キャベツ、玉ネギ、キクラゲ、小ネギを加えて炒め、塩、黒コショウで調味する。
(3)がらスープ600mlを加え、熱湯で軽くもどしておいた緑豆春雨100g(もどし)を加え、約30秒煮立たせる。
(4)福建天然塩を加えて調味し、ごま油を加えて香りを付け、虎皮蛋(揚げ卵)をのせる。
◆エバラで再現!模擬レシピ
レシピの「がらスープ」の代わりに「がらスープスタンダード(骨肉湯)」(20倍希釈)を使う。福建天然塩の代わりに岩塩など好みの塩でもよい。
●使用食材:がらスープスタンダード(骨肉湯)
豚骨、鶏骨、鶏肉を主体に炊き上げた濃縮がらスープ。中華料理をはじめ、あらゆる料理のスープベースとして、またコク付けとして、幅広く活用できる。使用方法は、スープベースとして使う場合は20~30倍、追い足しとして使う場合は40~60倍が目安。業務用がらスープのスタンダードとして定評。
規格=レトルトパウチ1kg