「主婦の店さいち」の惣菜弁当
“秋保のおはぎ”で有名な食品スーパー「主婦の店さいち」。おはぎばかり脚光を浴びているが、実は惣菜弁当の方がすごい。全国から見学者が絶えない「主婦の店さいち」の惣菜弁当を特別連載で紹介する。
◆店舗情報
「主婦の店さいち」 所在地=仙台市太白区秋保町湯元薬師27
販売坪約75坪。おはぎの日販は、盆と彼岸は約2万個。土・日は約1万個。平日は5,000個。惣菜弁当もそれに匹敵して大人気。
○割って広げてサイズ調整
◆かき揚げ丼 514g 420円
内容:エビ、玉ネギ、大葉、小麦粉、ナス漬け物、桜漬け、でんぷん、膨張剤、たれ
見どころ:容器の縁ギリギリに特大かき揚げがのっている。これ以上ないボリューム感だが、よほどの技量を持った人にしか、これほど完璧なサイズの商品は作れない。実はこのかき揚げはぶ厚く作ったものをバキッと割って広げ、容器に合わせてサイズを調整している。これならそれなりのレベルの人でも作れるし、ほぐれているので大きくても食べやすい。これだけ大きいにもかかわらず、玉ネギがたくさん入っていてジューシー。そのおかげで脂っこくなく、胃にもたれず食べられるのもうれしい。
○2色でまとめた盛り付けセンス
◆いくら、サーモン寿司 389g 600円
内容:サーモン、イクラ、キュウリ、パセリ、ガリ、ワサビ、酢飯、醤油3本
見どころ:この丼は、色が似ていて見分けがつきにくいサーモンとイクラの親子を、キュウリとワサビでしっかりと仕切っている。しかもイクラの中にパセリを入れることで色のメリハリをつけている。サケ親子、ガリ、醤油(蓋)のオレンジ色グループと、キュウリ、パセリ、ワサビの緑色グループ。2つの色のグループが1つにまとまり調和した、シンプルかつ繊細な盛り付けセンスが素晴らしい。
○3桁価格ではありえない高級感
◆鉄火(とろ)丼 306g 980円
内容:マグロ(トロ)、ワサビ、酢飯、醤油3本
見どころ:これほど美しくおいしそうに並んだマグロには、よほどの高級料理店でもない限りなかなかお目にかかることはできない。しかも脇には、パセリ、ワサビ、バランの緑色トリオと、魚の形をした容器に入った醤油トリオが、上品に添えられている。これまた高級料亭張りの上品な盛り付けだ。しかも高級店では丼は出さないし、作ってくれてもおそらく目が飛び出るような価格だろう。これほどの高級感を3桁価格で実現したことは、日本の惣菜史に残る快挙である。
○楷書のように丁寧な盛り付け
◆はらこめし 365g 480円
内容:サケ塩焼き、イクラ、キュウリ漬け物、三ツ葉、ワサビ、めんつゆ、調味料、白飯、醤油
見どころ:めんつゆで味を付けたご飯の上にサケの塩焼きとイクラがのった、東北の郷土料理「はらこ飯」である。だがよくある「はらこ飯」はサケとイクラが雑然とのっているのに対し、この「はらこめし」はサケとイクラが整然と並んでいる。同じ「はらこ飯」でも、走り書きと楷書、突進と行進、早送りとコマ送りくらいの違いがある。もちろんスピードは大事だ。だが多少時間がかかっても丁寧に作った商品は美しい。美しい商品のほうが売れるので、結果的に効率はいいのだ。
○ソースと醤油のダブル入れ
◆かき丼 373g 350円
内容:カキフライ、キャベツ、キュウリ漬け物、白飯、醤油、ソース
見どころ:カキフライには少量のソースがかかっているが隠し味程度。魚の容器に入った醤油とミニパックのソースが入っているので、買った人が自分好みの丼にすることができる。醤油をかければ和テイストの丼になるし、ソースをかければ洋食の丼になる。個々にかけて2通りの味を楽しむのもいいし、一緒にかけてブレンドした和洋折衷の味もなかなかいける。あえてどちらもかけずに、カキフライそのものの味を楽しむ手ももちろんアリだ。
○デフレ時代に適した低価格カツ丼
◆ハムカツ丼 421g 300円
内容:コメ、ハムカツ、卵、玉ネギ、三ツ葉、椎茸、ニンジン、めんつゆ、みりん、酒、調味料
見どころ:この丼のカツは豚カツではなくハムカツである。ハムが分厚いので結構ボリューム感があり、味も豚カツと比べてほとんど遜色ない。しかも普通カツ丼ではあまり使われない椎茸やニンジンも入っている。椎茸とニンジンは見た目が美しく、ヘルシー感もあってなかなか侮れない。豚カツを使ったカツ丼と比べるとかなり値段が安いだけに、デフレ時代にうってつけのカツ丼といえるだろう。
○波紋のように広がる4色の宝石
◆いくらめし 263g 280円
内容:イクラ、キュウリ漬け物、パセリ、ワサビ、めんつゆ、塩、白飯、醤油
見どころ:中心にはパセリがエメラルドのように緑色に輝き、その周りにはイクラがオパールのようにオレンジ色に輝き、その外側には白飯が真珠のように白く輝き、さらにその外側にはキュウリの漬け物がトパーズのように琥珀色に輝いている。まるで4色の宝石が波紋のように広がっているように見える。おそらくこれほど美しくアーティスティックな「いくらめし」は、日本中探してもないだろう。それが280円とは東北の奇跡だ。