近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:麺屋 彩未「味噌らーめん」
「麺屋 彩未」は、味噌ラーメンの生地、札幌で、いま最も脚光を浴びているラーメン専門店。創業は2000年。店主は味噌ラーメンの名店「すみれ」出身の奥雅彦氏(44歳)。当初は、門外不出といわれたすみれで修業した肩書きで注目されたが、次第に奥店主の真摯さと優しい味わいが高く評価され、人気は全国区に飛び火。いまや札幌ラーメンの世代交代を象徴する1人と目されている。繁盛ぶりは、16席・7時間営業で日販350杯の実績が示す通りだ。
“すみれイズム”を学んだ奥店主の持論は「おろそかにせず、当たり前のことを当たり前にやる」。地道な積み重ねが作り手の感性を研ぎ澄まし、それが個性に発展して、味作りに表れるのだという。一方、店づくりについては「繁盛店の雰囲気を学ぶことが大切」と説く。料理、接客、客層の三位一体。その雰囲気を演出する技量がラーメン専門店の経営には欠かせないという。
札幌ラーメンの新潮流を牽引する同店の現状を紹介する。
◆営業の概況:“純すみ系”の代名詞 優しく上品な味わいに評価
麺屋 彩未の立地は、札幌の繁華街から約5km、地下鉄・美園駅から徒歩3分ほどの住宅街。20坪・16席の小規模店、1日7時間営業ながら日販350杯を堅持する繁盛ぶりで、営業時間中は待ち並び客が絶えない。客層は老若男女幅広く、地元客と観光客の比率は通常半々。ラーメンの種類は、味噌、醤油、塩の3種類だが、味噌の注文が9割以上を占め、「優しく上品な味わい」との評価が高い。
注文ごとに野菜と味噌を炒める手間から、「1時間に50杯作るのが限度」(奥店主)とし、日販350食の売り切れ閉店を原則としている。
札幌ラーメンで有名なすみれと「純連」。それらを手本とする店を“純すみ系”と呼ぶが、麺屋 彩未は名実ともに純すみ系の代名詞とされている。
◆特徴と調理:味噌の焼き加減が勝負 習得には早くても2年
調理法は修業したすみれと同様。鍋にラードを熱し、おろしニンニク、モヤシ、玉ネギを炒め、ニンニクの香りが出てきたら、味噌を加えてさらに炒め、がらスープで割って味噌スープとする。がらスープは、豚ゲン骨9:鶏がら1の割合で約5時間炊き出したもの。麺は中太縮れ150g。仕上げにチャーシュー、長ネギ、おろしショウガを添える。
奥店主は、「基本的には修業時と変わりません。独自の工夫は、2種類の味噌を合わせたこと、おろしショウガをスープにまぜないで、塊にして添えたこと」と語り、「要は味噌の焼き加減。香りの出し方により、全く味が変わります。それが作り手の個性であり、一番の腕の見せどころです」と説く。
味噌の焼き加減を覚え、一通りマスターするには、早くても2年はかかるそうだ。
◆発祥と展開:和食料理人からラーメン職人へ すみれで学んだ師匠の背中
奥店主は高校卒業後、札幌市内の和食店の厨房に就職。仕事帰りに食べた味噌ラーメンのおいしさに感動し、21歳の時、漠然とラーメン店経営を決意した。「札幌近郊の出身ながら、実は本格的な味噌ラーメンを食べたことがなかったんです」(奥店主)
和食店を退社後、ラーメンの修業先を探すかたわらFRでバイトしていたところ、調理経験を買われ社員として入社。「ここで接客サービスと数字管理を学びました」(奥店主)
そしてラーメンを諦めてなかった26歳の時、チャンスが舞い込んだ。すみれが新横浜ラーメン博物館に出店することになり、知人のつてで助手に採用されたのだ。「当時のすみれは身内色が濃く、スタッフ募集は皆無でした。なので本当に運がよかった」(奥店主)
1年後、帰郷して本店で修業を継続。2000年の33歳の時、独立出店を果たした。
奥店主は、「すみれで学んだのは師匠の背中。かつて板前だった師匠が黙々と仕事に打ち込む姿。これに尽きると思います」と誇り、自身もそれを一貫している。現在、各地から出店要請が頻繁だが、“自身が現場を守る主義”から、すべて断っている。
店名の「彩未」の意味は、娘2人の名前を1字ずつ「彩」と「未」をとって合わせたもの。「自身が一番に守るべき思いを込めただけに、現状で十分」(奥店主)というわけだ。半面「すみれへの感謝を込めて自店の若手を育てたい」と、あくまでも前向きだ。
●店舗情報
「麺屋 彩未」 所在地=札幌市豊平区美園10条5丁目3-3/敷地・席数=20坪・16席/営業時間=午前11時~午後3時15分、5時~7時半、月曜定休、他月2回不定休
◆エバラで再現!模擬レシピ 「激うま赤味噌らぁめんスープ 辛口」「まろやか白味噌らぁめんスープ 甘口」「葱姜油」でやってみよう!
○作り方(1人前)
「赤味噌」(25g)「白味噌」(25g)をブレンドし、360mlのお湯で割り、「葱姜油」(30ml)を加え、味噌ラーメンスープとする。具材の表面に「おろし生姜」を添える。
○使用食材
●「激うま赤味噌らぁめんスープ 辛口」 味わい深い豚脂
生にんにくと生姜の辛味、豚脂の旨味をきかせたキレのある辛口タイプの赤味噌スープ。香味野菜(長ねぎ、生姜)の旨味と豚骨白湯を加え、深い味わいに仕上げている。
規格=2kg(約40人前)
●「葱姜油(ねぎ油)」 料理のコク付けに最適
豚脂に香味野菜を加えてじっくりと炊き込んだネギ油。あらゆる中華料理のかくし味、香り付け、炒め油として活用できる。
規格=800g
●「まろやか白味噌らぁめんスープ 甘口」 隠し味にアーモンド
豚骨白湯に豊かな風味の白味噌を加え、野菜(にんにく、玉ねぎ)の旨味をきかせて仕上げたまろやかな白味噌スープ。隠し味にアーモンドの香ばしさを加えている。
規格=2kg(約40人前)