アポなし!新業態チェック(61)「(ぱ)ハレノヒ」池袋PARCO店

2012.02.06 395号 12面

 ●ユニークな店名の新業態 多業種展開する異色の飲食企業

 昨年秋、長期間にわたるリニューアルを終えた池袋パルコのレストランフロアに、ノスプロダクターが手がける「(ぱ)ハレノヒ」がオープンした。同社は、中目黒でスタートしたヘルシーコラーゲン鍋の店「(汁)ハレノヒ」を皮切りに、表参道の「(畑)ハレノヒ」や新宿駅ビルに出店した「(る)ハレノヒ」など、不思議なネーミングの飲食店を次々と展開して話題を呼んできた。社長の小野坂氏は広告業界出身、副社長の黒石氏はアルバイトとしてスターバックスコーヒーに入社し、部長まで務めた人物だ。

 今回、池袋パルコに登場したこの店は、ルーをテーマにして人気店となった新宿の「(る)ハレノヒ」のメニューを取り入れ、さらに「ぱ」にまつわるカフェメニューなどを付け加えた新業態とのこと。

 テレビの情報番組でも取り上げられた同社自慢のルーには、「カレー」「トマト」「ホワイト」「ブラウン」などの種類がある。この中から2種類を選ぶことができる「る・ダボー」(1380円)というメニューが売れ筋だ。そうしたルーを使ったメニューには、サラダではなく蒸し野菜と自家製バーニャカウダソースが付いている。

 店舗は白い塗り壁にナチュラルなウッド素材の意匠、テーブルや布地張りのいすも木製だ。カフェ風のシンプルな食器の中で、売り物のルーを熱々で提供するのは有名ブランド「ストウブ」のココット鍋である。

 「(届)ハレノヒ」のブランドでネット販売する「ペロパン」やパフェなどのスイーツも提供しており、多くの女性客の人気を集めている。

 ★けんじの評価

 池袋パルコは、かつて一世を風靡(ふうび)したファッションビル、パルコ発祥の地だ。パルコという名称を全国区にしたのは渋谷の店舗だが、池袋のパルコがなければ渋谷パルコも存在しなかったのかも知れない。

 そんな池袋パルコのレストランフロアが12年ぶりにリニューアルしたと聞いて、池袋駅東口へと向かった。訪れた本館の7階と8階には、さすがパルコとうならせるようなオリジナリティーあふれる飲食テナントが並ぶ。どこへ行っても同じようなブランドばかりの昨今の商業施設とは、ひと味もふた味も違うチョイスだが、中でも同店は特に際立って不思議な飲食店だ。

 経営するノスプロダクターの飲食店には、店名の〈ハレノヒ〉の前に(汁)のような業態を示すキーワード(?)が付いている。現在展開しているのは(汁)の他に、(畑)(満)(届)(る)(ぱ)などであるらしい。社長の小野坂氏はもと広告業界のフォトグラファーだというが、さすがに広告会社出身の経営者らしいユニークな発想だ。

 店名にある「ぱ」とは、当然まずパルコの「パ」なのだろう。なぜならば、同店がコンセプトとして提唱している「“ぱ”が広げる“るー”の世界」とは、そこに「こ」が付けばもう「パルコ」なのだから。コンセプトやネーミングからクライアントをいい気分にさせるのは、広告代理店の基本の「キ」だ。こうしたテクニックも、実は出店戦略の重要な要素になるのだということは、多くの外食プロパー企業ももっと研究した方がいいのではないだろうか。ただし、確かにオジサンたちには少し分かりにくい世界ではある。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●店舗情報

 「(ぱ)ハレノヒ」池袋PARCO店 開業=2011年11月18日/所在地=東京都豊島区南池袋1-28-2 池袋パルコ本館7F

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

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