ラーメントレンド:ありそうでなかった明快なコンセプト 二郎系札幌味噌ラーメン
ラーメンの新たなジャンルを確立した「二郎」。のれん分け、インスパイヤ系と呼ばれる模倣店を合わせると、いまや二郎系は全国に500店以上と目されている。そんな中、ご当地ラーメンと二郎系が融合した新手のコンセプトが現れ脚光を浴びている。“二郎系味噌ラーメン”と評される札幌の「ブタキング」である。ありそうでなかった大胆な発想が札幌ラーメン市場を刺激している。
◆ピーク時は6坪・8席、5時間営業で月商350万円
ブタキングのラーメンは、早い話、キャベツ、モヤシ、厚切り煮豚をのせた大盛り味噌ラーメン。東京の流行を札幌の味で提供する単純明快なコンセプトなので、“物まね”と揶揄(やゆ)する声も一部にあるが、隙間をついた発想力と機敏な実行力は認めざるを得ない。また、地元の“純すみ系”とは一線を画す、ラードと味噌が一体化したスープも斬新だ。
店主の森光範氏は、東京の家系有名店で3年間修業後、札幌に移住して独立した。実は修業前、札幌での修業を決意したが、スノボ目的で移住する下心を見透かされ、有名店から門前払いされた経験を持つ。その屈辱をバネに現在の繁盛を築いた。
「味は大切だが、味だけを追求しても商売は成り立たない」が森店主の持論。「味に加え、お客が満足できる形を明確に示す」ことが森流ラーメン道だという。
その信念は札幌のラーメンファンから受け入れられ、一昨年に開業した本店の伏古店はピーク時、6坪・8席、5時間営業で月商350万円を超えた。昨年、2号店の大麻店を開業。道外からも出店要請が相次いでいる。
メニューは味噌味の煮豚1枚の「ラーメン」(750円)をベースに、煮豚の枚数で価格が変動。麺はストレート太麺240g(生)、煮豚はばら肉の煮豚で1枚約100g。野菜はモヤシ300g、キャベツ200gをボイルしたもの。これらに二郎同様、無料で野菜、ニンニク、脂、辛めを増量できる。麺の大盛りは100円増し。煮豚3枚ですべて大盛りにすると、重量は2.5kgに達する。
なにより札幌の主流“純すみ系”とは異なるラードと味噌が一体化したスープが自慢だ。
森店主は「純すみ系は、ラードで味噌を焼いてスープで割るので、ラードがスープの表面に浮きますが、うちのはラードとスープが乳化したように一体化してます」と差別化を強調。「純すみ系のように、注文を受けてから味噌を焼きたかったのですが、当初は人手不足だったので、夜中に1人で味噌を焼いて仕込んでいました。その苦肉のストックノウハウが看板スープに化けました」と苦笑う。
◆森店主の愛用食材
ヱスビー食品「S&Bセレクトスパイス 辛みスパイス(パウダー)」
ヱスビー食品の「辛みスパイス」を愛用。コショー、赤唐辛子など辛いスパイスをバランスよくまぜたミックススパイスだ。「半分くらい食べた後に使うお客さまが多いですね。ラーメンの量が多いので、残り半分をピリ辛に調味すると、最後まで飽きずに楽しめるのでしょう。使われすぎも困りますが」(森店主)と言う。
規格=L缶350g、他
●プロフィール
森光範(もり・みつのり) 1975年埼玉県入間市生まれ。東京の家系「百麺」で3年間の修業後、札幌に移住し、家系「らもみ」を出店し独立。3年後に閉店し、札幌の焼肉チェーン「GAJA」で2年間の勤務を経て再独立。10年4月「ブタキング」を開業。