メニュートレンド:蒸しスパゲッティ 世界で一つのパスタ料理 乾麺とも生麺とも違う新食感
東京ドーム約6個分(28ha)にあたる大規模再開発事業で、華麗な変貌を遂げつつある大阪の天王寺・阿倍野周辺。外食分野においても話題の人気店が続々と進出している。そんな中ひときわ話題を集めているのが、べねスパゲッティの「蒸しスパゲッティ」である。ブームの蒸し料理をスパゲティに取り入れるとどうなるのか……。想像をかりたてるネーミングとわくわく感をそそる提供方法、期待を裏切らない味でファンを増やしている。
●乾麺とも生麺とも違う新食感
世界最小のパスタといわれるクスクスをモチモチに仕上げる「クスクス鍋」からヒントを得たオリジナル陶器で、麺と具材をソースの蒸気で蒸し上げるのが蒸しスパゲッティ。さっそくオーダーしてみたところ、タジン鍋のような外見のオリジナル陶器が、食欲を刺激するよい香りの蒸気を吹き上げつつタイマーとともにテーブルへ運ばれてきた。期待に胸を躍らせながら待つこと5分、ジリジリというタイマーの音を合図にホールスタッフが最後の仕上げに取りかかる。
まず蓋が開けられると、2つの半月状の皿に盛られた麺と具材が湯気の中から出現。その皿をずらすと、さらに下からグツグツと音を立てるソースが現れる。半月状の皿には小さな穴がいくつも開いており、ソースの蒸気で麺や具材が蒸されると同時に、具材から染み出るうま味が余すところなくソースに注ぎ込む仕組みとなっている。そのソースに蒸し上がった麺を投入し、おろしたてのチーズと黒コショウをあしらえば完成。徐々に全貌を明かしながら期待と想像をかりたてていく演出法は、心憎いほどだ。
口に運んでまず驚くのは、麺の食感である。下ゆでした乾麺を蒸しているのだが、その「もっちり感」と「しこしこ感」は通常の乾麺とも生麺とも違う独特な歯応え。さぬきうどんに通じるコシの強さが非常に新鮮だ。また、じんわりと熱を伝える陶器で調理した具材はふっくらジューシーでうま味もたっぷり。陶器の優れた保温性で最後のひと口まで熱々が楽しめる点も、この料理の魅力だ。
「スパゲティ料理はどの店も似たり寄ったりなのが現状。その中で感動と驚きを与えるインパクトのあるものを作りたかった」と語るのは、メニュー考案者の梅田正人氏。「べねスパゲッティ」の他、「サーモンベーネ」「イソベーネ」など個性的な業態の13店舗(2012年4月現在)を運営する(株)いっしょうけんめいの取締役専務である。その言葉どおり、口コミ主体で人気が広がるの個性的なメニューが完成。「思わず誰かに伝えたくなるサプライズ」がポイントだ。
6月にはシンガポール、11月にはタイで同業態の店舗をオープンさせる予定。2015年60店舗を目指し、同社の挑戦は続く。
●店舗情報
「べねスパゲッティ」 経営=(株)いっしょうけんめい/所在地=大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-5-10 あべのnini1F/開業=2012年2月/営業時間=平日ランチ午前11時~午後2時半(入店ストップ・以下同)、ディナー午後5時~11時、土・日・祝ランチ午前11時~午後5時、ディナー午後5時~11時、休日なし/坪数・席数=約20坪・38席/平均客単価=ランチ1800円、ディナー2600円/平均来店客数(1日)=ランチ50人、ディナー40人/平均月商=約600万円/スタッフ=3~5人
●愛用資材・食材:「グラナバダーノ」
高瀬物産(東京都中央区)輸入
蒸しスパゲティの仕上げのチーズには、イタリアのグラナバダーノが使われている。このチーズはパルミジャーノ・レッジャーノよりも熟成期間が短く、香りもクセも穏やか。日本人の味覚に合いやすい上に、繊細な魚介類の味わいとの相性も抜群だ。その本来の風味を生かすため、べねスパゲッティでは食べる直前にお客の目の前ですりおろしている。
規格=1kg